分裂にっぽん 中流層はどこへ

かつては「1億総中流時代」と呼ばれていた。しかしバブル崩壊以後景気が後退し、失業者が増加した。景気が戻ってきた2000年代前半では「格差」が顕著なものとなり、貧富の差が年々激しさを増していった。本書はその格差問題を広範囲にわたる取材でその格差に苦しんでいる人たちのルポも兼ねている1冊である。

格差問題というのは非常に深刻ではあるが、これに関しては両端の側面がある。一つは「自己責任論」もう一つはいくら頑張ってもそれに見合う対価が支払われていない「他己責任論」とわかれる。後者のほうからみると、今の非正規雇用の人口の比率、数ともに右肩上がりであることが要因である。反面正社員の数も減ってきている。

しかし正社員も福利厚生こそなされてはいるものの2000年に比べて給料が減っているのも実情として挙げられる。それでいて物価上昇。現在正社員でもそのワーキングプアの波が押し寄せているというのも現状である。非正規雇用に関しては人件費削減というのがよくわかる。

では両方で削減した人件費はというと、ほとんどが純利益として計上され、株主配当や役員賞与に回っているという実情である。前者はニートの中には働きたくないという考えの人もおり、そういう人たちの視点も本書は描くべきではなかろうか。

最後になるが、弱者救済は行うべきではあるが、弱者には最低限生活できるような雇用やアドバイスや給料がなされるべきである。