ゴーマニズム宣言 パール真論

本書は私も以前レビューをした北海道大学准教授が書かれた中島岳志の「パール判事―東京裁判批判と絶対平和主義」を批判し、パールは東京裁判を通じて何を伝えたかったのかを説いた1冊である。

本書の約大半は中島氏の批判であったが、よく的を射ている。パールの判決文(要約ではあるが)をすべて読んだがパールが日本を完全無罪にしようと思ったわけではないというくだりも事実無根であり、パールが護憲であること、カンジーイズムであることについても触れられていない。むしろ東京裁判において思想を書いていないのに、中島氏の解釈によりいかにしてこんな歪曲な文章になったのか疑問に思っていた。

本書では「正論」での論文2部と、「SAPIO」での連載をまとめたものであるが、その中で中島氏を批判したことにより、昨年末から長きにわたって論争を繰り広げた。私はそれの連載は論戦については全く読んでいなかったのでわからないが、マンガの中でどのように批判しているのかというのも非常によくわかった。

パール判事が東京裁判を通じて何を伝えたかったのか、パールの思想とはというのは、中島氏のより正確、かつ内容も吸収しやすく書かれていたので楽しく啓蒙することができた1冊である。