読み替えられた日本神話

日本神話というと大概「古事記」や「日本書紀」である。元来日本神話で語られる文献は非常に多いものの「古事記」「日本書紀」で描かれていることほど日本を描いている作品はない。
しかし本書でそれを覆そうとなるとは…。本書では中世から近世にわたっての日本神話の観点について探っている。

中世の神話に対する価値観というのは左右しやすくなっていると書くが、もしもそれが合致とするならばギリシャ神話や古代ローマ時代の事も合致するのではないだろうか。日本と同じ時代ヨーロッパではルネッサンスというのがあった。その中ではギリシャ神話や古代ローマ時代の背景が絵になって現われている。

その中でも数々の傑作が誕生している。しかしそれまでは語られはしたものの像にはなっていない目に見えないものであった。そのため価値観によってはその時代の偉人達がどのような性格であったのかという解釈も多様であったと私は思う。これが日本に通程するものがあるならば、日本は作品や神話観は違えど同じ道をたどっていたという証明にもなる。ということは革命が起きていないにしても日本は諸外国と比べても何も後れをとっていない一つの材料と言えよう。

さて私の中で本書の特筆すべきところといったらどんな所かといわれると、宮崎アニメを神学的観点から考察しているところだ。特に「もののけ姫」は「非農民像」をベースにしたというところもさることながら、日本書紀やオウム事件を関連させながらの考察には驚嘆という言葉以外見つからない。

宮崎アニメには非常に難しいロジック、レトリックが隠されているのは周知の事実である。しかし宮崎駿の高度な技術・哲学によりそれを全く感じさせない。だから様々な角度から考察されている本や記事が多く出ている所以である。