日本の難民受け入れ過去・現在・未来

日本における難民問題はそれほどメディアでは取り扱われていない。しかし難民は人権問題であるので日本の法務省および外務省は看過できない課題と言えるのではないだろうか。
本書ではその難民問題を日本の現状及び日本に近い北朝鮮および台湾海峡における難民問題についてピックアップしている。

第1章では監修者自身の難民受け入れのための51の提言が乗せられている。共感はできるものの、本当に実現するのであろうかという考えとなると、政治的な軋轢により実現できないところもある。結構現実的であり、合理的要素は多いものの、それを実現ともなると合理的なものというわけにはいかない要素も捨てきれない。元共産党最高幹部の筆坂英世氏がある番組で「政治は合理的であるほどうまくいかない」と言っているのだから。

第2章では日本の難民認定の現状についてつづっている。日本全体で難民認定されたのは2005年現在46人(p.48より)である。それなりに難民に認定されているという考えもあるのではと考えるものの実際に申請した数は本書では明らかになっていないので多いのか少ないのかという判別は難しい。

日本は難民鎖国と言われているという。その最たる理由としては申請に対して認定される件数はほとんどない。とりわけクルド人難民については1件も認定していない年まであるという。それによっての法制化はなされているのかと言うと不備な点が多い。人道問題であるので法ではないという意見もあるが、日本は法治国家である。

そのためには法の整備と解釈の万全かを行う必要がある。しかしそうさせないといけないと考えると、日本は法を超えた努力というものに関して寛容ではないということをまざまざと見せつけられてしまう。侠気というものがないのかとも思ってしまう。

第6章では諸外国の難民の受け入れの状況についてまとめられているが、確かに日本では諸外国に比べて認定者数は際立って少ない。しかし申請数も少ないので比率で言ったら諸外国とほぼ同じではないかという意見の人もいるかもしれないが、申請したのにもかかわらず門前払いになったという件がカウントされていなければ統計自体成り立たなくなる。勘繰ってしまうと堂々巡りにもなりかねないものの疑いの余地はあることは確かである。