社員を働かせてはいけない

本書を読む前にこの表題からして思ったことは社員は「働かなくていいのでは」ということなのかと勝手に解釈してしまった。しかし本書はそういうことを言うのではなく強制的な意味で「働かせる」ということをやめろと言っている。若者は給料のために強制的に働くのではなく、自分の手に職をつけるという意味でたとえ勤務地が過酷でも給料が安くても「働きたい」という能動的なニュアンスを持っている。そう考えると今日の労働観というのは若者を中心に変わってきているといってもいい。

第1章から第3章までは現在の若者労働者の現状について書かれている。とりわけ第1・2章では3年以内で辞める若者の現状が記されているが若者の労働観とそれより上の世代の労働観の齟齬がよくわかる。そのことにより若者が突然辞めていく理由がよくわかる。現に「若者が突然辞める=やる気がない」という短絡的な考えを持つ人が多い。

しかしそうではない。自分のキャリアを挙げていくために、そして何よりも自分らしさを求めるために自分と波長が合わない会社とはスパッと縁を切るという若者が多い。そう言うと「今の若者は我慢が足りない」のではという意見も出てくる。果たしてそうだろうか。確かにキレやすくなったという実情はあるが、これは若者に限らず世代に「暴走老人!」もあるように言えることではないだろうか。

3章では会社に関して求められているのは会社のためになすべきではなく、社員のために会社がどのように協力するのか(社員を育てる、もしくは社員に視線を合わせた仕事を抵抗すること)ということについて書かれている。これから成長する若い人たちのため何を為すべきかというのを会社側につきつけられている感じもした。

しかし会社は利益を出すために社員の教育にも心血を注ぐということを考えると、頭の痛い話であるが満足のいく仕事を提供し、それにより利益を得ることができれば、会社側にとってみてもそういう面でチャレンジできる話ではなかろうか。

第4・5章では今度は若者側の課題について書かれている。簡単にいえば「キャリアアップ」のために何をすべきかということである。単に「キャリアアップ」といわれると専門的スキルの向上というのが目に見えるがそれだけではない。社会人としてのコミュニケーション力や仕事を行っていく上でのコスト意識、タイム・マネジメントなど諸々を成長することも「キャリアアップ」の一つである。

それを行うためにはまず「自分を見直す」ということが大切である。自分のいいところや悪いところを洗いざらいする。そして社会人生活の中で身につけた力はどのようにして得たのかというのをノートに書くだけでも自分に対する課題というのが見えてくる。

第6〜8章は今度は上司・経営者はそのような若者社員をどう育てていくべきかである。こういった若者は上司にとっても頭の痛い話であるが部下を育てていく身であるので、そう愚痴も言っていられないだろう。でも逆に考えればそういった若者をきちんと育て上げることができれば今日の社会を制することができると考えられる。

第9章は社員満足度テストが入っている程度である。そして第10章では社会における女性の地位向上についてであるが、ここでは割愛させていただく。

日本の若者と共に会社も変容しなければいけない時にきた。とはいえど会社は若者の顔を窺いながらやっていくのも実益を為さない。若者社員をどのように育て上げ会社、若者社員双方満足できる方法を模索することも日本企業の1つの課題と言えよう。