医療格差の時代

「医療はビジネスではない」

これは前身のブログで妊婦たらいまわし事件のときに書いたことである。当時はあまりに無勉だったのですぐに炎上してしまい収拾がつかない状態となった。

それから少しは勉強した為、ちょっとだけ語れるようにはなったものの医療問題は複雑を極めている為どうも的外れになっているような感じがしてならない。

それはさておき、本書では医療格差の現状について生々しく書かれている。ここでも書かれているが医療における地域格差の問題の深刻化もあり、それとは対照的に医療の自由競争化も論じている。私が複雑を極めるといったところの1つである。医療はビジネスである。しかしあまりに自由競争が行われてしまうと地域格差の影響により僻地では満足に医療を受けられなくなってしまう。現にそういう現状がある。

私の出身地である北海道では過疎地だと3時間待ち3分診療というのが日常化している。特にその土地では高齢化も進んでいることにより病院へは車で約数十分、ひどいときには数時間移動しないといけないという現状がある。それで完全自由競争となったらどうなるのだろうか。その土地に住んでいる人たちを見殺しにしろというのか、という論調になる。

とはいえ自由競争がなければ医療の進化というのはとまってしまうことは明白である。鎬を削りながら進化していくのも医療である。そのためには競争原理も必要である。ただ悲しきかなそれにまつわる医者の数が少ないというのも現状であるが、これは90年代の後半において医療費が高すぎるや医者の人数が多すぎるといったメディアの作られた論調によるものである。それにより2000年代前半には伸び悩み高齢者など衣料を必要となっている人が増えているという現状を作り出してしまった。

そう考えるとその自由競争の原理に基づき医療も株式会社化、民営化をしたほうがいいという考えもある。本書でもそれについて指摘しているが厚生労働省や日本医師会はそれに反対であるという。このことから大きな利権が蠢いている様にも見えるのは私だけであろうか。医者の人数不足であると共に医療現場の過酷化も指摘しなければならない。いったん医療事故が起こったり、最近では医療現場のたらいまわしが起こるとほぼ必ずといってもいいほど医者に批判の矛先が向けられる。

ほかにもクレーマー、モンスター・ペイシェントの急増により医者はより弱い立場におかれているという現状もある。それにより精神的にやむ医者、自殺する医者も出てきているのも事実である。また時間外勤務も急増し、徹夜明けや休みが取れない医者も多いという。医療現場というのは非常に過酷を極めているが、それに対する施策をとっていないというよりは、無いというのが現実としてある。

厚労省はようやく重い腰を上げて数年前に国公立大の医学部の定員を増やすという策に出たのだがそれの結果が出るのも数年後である。さらになりたての医者が本当に医療に関してまともに出来るのも数年立たないといけないとなると人員的な解決は数年、悪くて10年以上先になりかねない。早期解決をという声もあるがそういう要因もあってか現時点で解決策を打っても効果が現れるのは数年後という概算になってしまう。

八方塞ではあるが厚労省や日本医師会がそれに後ろ向きであったということは否めない。それによって個々まで深刻化してしまったから責任は重大である。舛添大臣は尽力しているがそれほどまでに根深くなった問題の解決のひとつの糸口を見出して欲しいとしか言いようがない。