入門組織行動論

「組織行動論の実学」によってこの組織行動論に目覚めたといってもいいかどうかは分からないが、リーダーであるべきことや組織にいる中でどのようなふるまいを行うべきか、組織とは何なのかについて学術的にみてみたいので本書を手に取った。
本書の構成は以下の通りである。

はしがき
第1章 組織行動論への招待
第2章 モチベーション
第3章 組織コミットメント
第4章 キャリア・マネジメント
第5章 組織市民行動
第6章 組織ストレス
第7章 チームマネジメント
第8章 リーダーシップ
第9章 コミュニケーション
第10章 組織文化
第11章 組織変革
第12章 組織的公正

この章建てから見る限り机上の空論ながら実践的なものも入っているような気がする。実際に本書を読んでほしい読者として大学生のほかにビジネスパーソンに読んでほしいと書かれているので一読の価値はあるかもしれない。今回もちょっと章建てが多いので自分が注目したところをかいつまむ程度にしておく。

第6章は「組織ストレス」だが、組織行動においてストレスはつきものであるが、ここではストレスについていくつか分類している。ストレスにもいくつか種類があり、「VDT症候群(コンピュータなどの機械仕事によって起こるストレス)」「テクノストレス(コンピュータと人間関係の崩壊によるストレス)」「バーンアウト(燃え尽き症候群)」「過労死」がある。そう考えるとシステム開発にかかわる業界はストレスと限りなく溜まりやすい立場になる。そこでストレスの発散の仕方については現状と課題程度しか取り上げられていないため書かれていなかった。しかし過労死について、英語による単語ななく「karoshi」と英語でも通じるほど日本独自の病だという。もっと学術的な話になるが日本人は勤勉の民族とも言われるが、それに利用しすぎたことによりこういった過労死が出始めたのか、それとも経済が世界的に追いつくためにはこれしかなかったのか原因や対策については経営層も考えなくてはならない深刻な問題となるだろう。

第8章「リーダーシップ」ではLewinらの研究によるリーダーシップの体系が書かれているそれによると「専制型」「民主型」「放任型」といった分類に分けられるようだ(本書ではもう一つ「変革型」についても書かれている)。ちなみにそれぞれ利点と欠点があり、どれがもっともいいリーダーなのかというとどちらとも言えない状況にある。例えばアップルのスティーブ・ジョブスは明らかに「専制型」であるし、多くの企業が採用している「民主型」「放任型」も然り。しかし現在の日本では「専制型」というのは悪と捉えがちになっているのかもしれない。実際に不祥事を起こした会社の半数近くは「専制型」によって事業が急成長を遂げたと言える。会社を急成長に導き業界でも名が知られるのが早いのが「専制型」の強みとも言える。しかしそのリスクはあまりにも大きくリーダー自身が権力にしがみつくことにより権力の腐敗が起こる。そうなると所々で軋みが目立ち、そして不祥事いう形となって社会的にバッシングを受けてしまう。「実学」でも書いたが権力はいったん持つと強いが、一変道を外れると急な坂から転ぶように凋落の一途をたどってしまう恐ろしいものである。権力は使い方もそうだが、譲り方、引き際についても学ばなくては権力の扱いに苦慮してしまうだろう。

組織とは何かについて勉強もでき、同時にどういったリーダーシップを築き、コミュニケーションを形成していったらいいのかなど、実践的に学ぶ一つの基礎として1冊あると結構心強いだろう。