グラミン銀行を知っていますか?

ノーベル賞のことで話題となっている。先日日本では、米国シカゴ大名誉教授の南部氏ら3名が物理学賞を受賞し下村脩氏が化学賞を受賞した。また個人的に注目だった平和賞は前フィンランド大統領のマルッティ・アハティサーリ氏が受賞し、中国の人権運動家の胡佳(フー・ジア)氏は惜しくも受賞を逃した。

さてこれを述べるのかというと本書は一昨年にノーベル平和賞を受賞した「グラミン銀行」を取り上げるからである。

この「グラミン銀行」とは一体何なのかというと、1983年バングラデシュに建てられた「貧者のための銀行」であり。ムハマド・ユヌスもその創設者のひとりであり、同銀行の総裁である(ちなみにこの方も2006年に平和賞を受賞している)。この銀行は低金利でお金を融資し貧困の解消に役立てられているが、借主の97%が女性であることから「貧困女性開発の自立支援」の副題がついたのだろう。

ちなみにこのグラミン銀行は「マイクロクレジット」ということを行っている。これは貧しい人々が起業できるように、少額の借金によって安定した生活がおくれるようにするということである。マイクロクレジットはグラミン銀行だけではなく様々なところで行われているがグラミン銀行ほど有名になった例はそれほどない。

さてこのマイクロクレジットについてグラミン銀行の活動について書かれたのは本書であるが、すべてがうまくいっているわけではない。実際グラミン銀行の融資率は約20%であり日本の消費者金融とさほど変わらない(むしろ前者のほうが若干上)ために返済が滞ってしまうことも少なくない。

それによりマイクロクレジットをやめた人もいる。しかしそれもごく少数であり、本書の巻末に書かれている2005年10月のデータによると返済率は99%と非常に高い。認知はされてきてい降りメンバーも約5百万人(これも2005年現在)に膨れ上がっているという。

本書を読んでの感想であるが、グラミン銀行こそ貧困の救世主として注目されている。しかし融資している対象やこのグラミン銀行のメンバー構成もほとんどが女性であるためか「貧困の女性のための銀行」といえる。実際これだけのお金をもってきたかというのも気になったが、強制貯蓄によるものであるという。

これについては少し幻滅した感じもある。というのは恵まれない人たちのために募金で集めてこれほどの額になりましたということを自分自身で想像していただけに、裏切られた感じがしたからである。しかし貯蓄も悪いものではなく、当然設けてきたのだからそれに還元するという考えからすると強制であるにせよ、これが大いに役立っていることには間違いない。

現在世界の半分は1日2ドル以下での生活を強いられている。さらに世界の約20%が1日1ドル以下での生活を強いられている。そのことを考えるとお金で人々を喜ばせることができるという手段もある。第2第3の「グラミン銀行」ができることにより少しでも貧困が解消できる起爆剤となればいいと私は思う。