日本史の一級史料

歴史の説やエピソードにおける意見は史料をもとにして行われる。とりわけ本書に書かれているような「一級資料」はそれについての重大な証拠となり得る。しかし本書を読んで混同してはいけないのは「一次資料」と「一級資料」は基本的に違うという所だけは釘を刺しておかなければならない。

それと本書の主張と相容れられないのがもう一つある。本書で書かれているのは安土桃山時代から江戸時代にかけてであり、それらの歴史を証明するのは史料のみである。そのため資料からいかにして歴史を読み取るかというのがカギとなるため、「一級資料」を駆使して歴史を読み解くしか方法がない。しかし江戸時代末期から現在にかけての近現代史ではそのことをやるとかえって歴史認識問題を混沌化させてしまう。

つまりは「一級資料」という判断だけでやってしまうと責任の所在がどこであるのか、ある事件は一体誰が首謀者なのかが見えなくなってしまう危険性がはらんでいる。近現代史は「証言」や「それを裏付ける史料」をもとにして「誰が」「どこで」「いつ」などを証明とした「一次資料」が大事となる。ただ歴史学においての検証は人によっては「一次史料」と言った分別もあれば本書のように「一級資料」をもとにして学説を立てる人もいる。そのため歴史学的にも確固たる検証方法は今のところあいまいなのではと思ってしまう。

本書はあくまで歴史的史料の調査方法の一つを紹介したまでである。これが確実にいい方法とは限らないので注意頂きたい。