IPTV革命-放送・ネット・モバイルのビジネスモデルが変わる


IPTV革命-放送・ネット・モバイルのビジネスモデルが変わる IPTV革命-放送・ネット・モバイルのビジネスモデルが変わる
西 正

日経BP社  2008-04-24
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インターネットとTVが仲違いしている様相であるが、IPTVという構想ができ、ついにネットワークを通じて映像を配信するサービスというのができた。さらにNHKは「NOD(NHKオンデマンド)」というインターネット配信を行うことが決まった。いよいよTVがインターネットに対して本格的に殴り込みに入ってきた様相である。
第1章はインターネットの普及により「見直し番組」の提供についてであるがNHKは積極的に取り入れるという方針を決めている。一方民放連はそれに関しては消極的である。むしろ著作権(もしくは著作隣接権)を盾にしてやらせないという体質がある。それにも理由があり、CMとの広告料などの既得権益の確保に躍起になっている。しかしNHKがサービスを始めるとなると追従してやるということも考えられるが、それほど認知はされていないながらも、すでに行っていることも事実である。ちなみにNHKは有料配信を目指しているが視聴率の関係で無料化せよという声も少なくない。そのコンテンツ自体の全貌は分からないが製作費をわずかに削れれば無料化も可能ではなかろうか。さらに広告費を若干とれれば無料化というのも十分に可能である。ただこれについてはNHK側も見解が分かれており、受信料で賄うのかそれとも利用料として別にとるのかという議論はある。それについての両方のリスクについては未払い問題も絡む。そして後半にはすでに進んでいるアメリカの「キャッチアップTV」のケースを取り上げている。これについては日米の広告の違いからそういったネット配信も可能になるという違いを見せている。民放のTV局は広告によるスポンサーが主となっている(ただし小さな番組にはそういったスポンサーがつかずスポット広告になる)。一方アメリカのTV番組はそういったスポンサーを持たず、CMはすべてスポット広告のみである。まず広告の在り方から見直すべきところだがどこまで踏み込めるのかというのも課題といったところである。
第2章は「民放業界の再編と地上デジタル再送信手段の多様化」であるが、持ち株会社制度解禁による民放業界の再編については進んでいることは事実だろう。ただし在京キー局の圧力を考えると再編の道は途中でぱったりとなくなることが心配である。そして後半では地デジについて取り上げられている。現在地デジの普及率が芳しくなく20%あるかないかといったくらいである。しかも地デジを見ることのできない地域もあったり(「難視聴」により視聴できなくなるところもある)、さらには地デジのチューナー内蔵テレビやチューナーも高いために変えないという人も少なくない。2011年7月24日にアナログ放送を終了するとなっているがそれを知っている人の割合も75%しかおらず総務省は危機感を募らなせなければならない。日本は完全移行となっているが実際に行った国はオランダ、フィンランド、イギリスなど4カ国しか行っておらず地デジ先進国といわれているアメリカでもアナログ放送は続けている。地デジの移行期間延長もしくはデジタル・アナログの並行も視野に入れて抜本的に見直していかないとTVの視聴人口も伸び悩むどころか頼みのTV局の財政赤字にもなりかねない。それによって日本経済の減速も避けられないと私は思う。
第3章はIPTVのコンテンツについてであるがさっそくこれに至ったニーズについて紹介する。「YouTube」などの動画共有サイトでは著作権で違反になっているTV番組を投稿するというのが増えている。TVのテロップにもそういったものが出始めた。著作権側とユーザー側でも著作権意識に隔たりが生じ、解決の糸口すら見えていない状況である。しかし裏を返せばそういったニーズがあるということをTV局はなぜビジネスチャンスとしないのかが不思議である。前述にも広告の既得権益がなくなるからと言ったが実際に無料で動画配信を行いそこで1〜2回本編の前にCMを流すだけでもいい収入になり、動画の周りに広告バナーを張り付けるだけでも既得権益に程近い広告収入を得られるのではなかろうか。そうなると広告収入の確保も楽になり視聴者のニーズも柔軟になり視聴率も上がる。IPTVや動画配信というのはそういったことを秘めている。著作権の権利処理については本書でもわかりやすく図にして書かれている。とりわけ取り沙汰されやすいアニメを例にしているところが本書の面白いところの1つである。アニメは広告収入が取りづらく、視聴率もそれほど取れない。では収入源といったら何かというとOVAの収入や一部は有料ネット配信にても収益を得ている。さらにTV局のみならず、出版社や玩具会社なども出資しているため収益としては非常に少ない。当然二次利用収入も活路はあるのだがやっているところもあるがそれほど収益が出ないというジレンマもある。
第4章はIPTVスタートに向けて進化が問われる課題について書かれている。IPTVはCATVのように多チャンネル化を目指しているが、これについてユーザーの利便性やサービス内容によって競争が成り立つのではないかというのが著者の考えである。IPTVはNHKが単独で行っているため「ブルー・オーシャン」の様相を秘めているが、おそらく民放も間もなくかみついてくるだろう。その時にどこで差をつけるのかというのも非常に面白く、もっと言うとTV番組の質の向上にもつながるのでTV離れを抑止させさらなる視聴人口の増加を図ることができる。TV後進国となっている日本にとってどのような起爆剤となるのか見極めていかなくてはいけない。

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