名ばかり管理職

昨年の秋ごろに「日本マクドナルド」で起こった残業代支払いを巡って起こした裁判がある。そこで「名ばかり管理職」というのが話題をさらった。先の裁判は地裁で原告の勝訴となったが、マクドナルド側が控訴し現在も係争は続いている。この窮状について昨年の11月に「クローズアップ現代」でも取り上げられた。げんざい「名ばかり管理職」が数自体は把握できていないもののコンビニやファミレスといった業界を中心に数多くいるというのが現状である。
本書はこういった「名ばかり管理職」の現状について克明に描かれている。

第1章はコンビニとファミレスの正社員の「名ばかり管理職」の実状であるが、まず最初に想像を絶する労働状況に只々驚くばかりである。そして日本の労働基準法等について順守しているのかという会社の体質にも疑いを覚える。

第2章は上記の「マクドナルド裁判」である。
「名ばかり管理職」が争われた裁判であるが原告の方はなんと現役である。労働のことに関して争う裁判は民事では会社の労働団体と会社と争う構図であったり、もしくは辞めた社員が会社を相手取り裁判を起こすと言ったことを想像するが、この裁判は現在もその企業で働いておりしかも一人で裁判を起こしたということでメディアは共感と感動を覚えた。実際その勇気ある行動によってこの「名ばかり管理職」というのが明るみにでた。芋づる方式のようであるが勇気ある人ひとりの行動によってここまで大きな話題となり人を動かしたということは人間一人の弱さはあるものの勇気と誠実を通す行動はいかに人を共感できるのかというすごさを感じた。

第3章は「名ばかり管理職」のことについて統計を行った結果について書かれている。

第4章はそれを生んでしまった原因についてであるが、企業の効率化が悪い方向に生んでしまった結果がこれである。

第5章は行政の功罪である。それについての矛先は厚生労働省であるがそれについて責任を問えと言って舛添大臣を辞任させるというのは一寸考えものである。厚生労働省は問題を山積しており、パンクしそうになるほどであるが、もし舛添大臣が辞めたときに誰がこれらの問題を処理できるのかということを逆に問いたい。

第6章は「名ばかり管理職」に戸惑う企業の現状についてである。
「名ばかり管理職」はごく最近出た話であるが、これを解決するには相当の時間をかけなければならない。それと同時に管理職を含めた労働者の在り方についてもっと考える必要があると私は思う。ある国会議員や論客は「企業あっての労働者」と主張しているが、ではその労働者たちが病気でいなくなったら、企業は生きていけるのか。企業あっての労働者であるならば、こういった現状にいち早く問題を究明して手を打っていくということが企業としての在り方である。それを行っておらず保身に走る企業は日本の企業として胸を張っていけるのだろうか。私はむしろ恥ずかしく思う。企業として働くよりもまるでスペインやオランダが植民地に対して行った強制労働に酷似しているのではなかろうか。そしてその体質を改めない限り経済は衰退するという危機感を抱いているのだろうか。私はこう問いたい。