経営理論 偽りの系譜―マネジメント思想の巨人たちの功罪

本書は経営理論、とりわけマネジメント思想を「必要悪」としてとらえつつも、テイラー以降の経営思想の大家の本質を見抜き、今日の経営者やマネージャーが誤った行動をとる原因と理由について仮説を立てていくという普通の経営理論の考察には御目にかかれない1冊である。

まず第1章で衝撃の節が現れる

「マネジメントは非アメリカ的である」

今日の経営理論の多くはアメリカ発である。しかしこの経営理論は「非アメリカ的」というレッテルをはるのには本書にも書かれているが矛盾が生じる。しかしここで「はじめに」の所にさかのぼると、

「マネジメントの大家(グル)として、アメリカ人を企業勤務になじませようと、水先案内人の役割を果たした点だ。」(p.1より)

「マネジメントの大家たちは、自由を愛するアメリカ人をマネジメント・パワー(経営の権力)に従わせるという、大仕事に取り組んだ。」(同じくp.1より)

私の推測する限りではこうである。アメリカ人(イギリス等の国から渡ってきたアメリカ人と言いたいところだが、おそらく先住民族らのことを言っているのだろう)は自由気ままに暮らしたがったのだが、ヨーロッパの階層的主義(マネジメント)がやってきて自由をある程度まで剥奪し、企業文化を根付かせ、「偽りの自由の国」を創り上げたといっても過言ではない。こう考えると戦後のGHQによる日本の統治もまさにその一つと言えるだろう。さらにイラク戦争で行った統治政策も然り。

第1章の後はフレデリック・W・テイラーからピーター・ドラッカーまでの経営者を悲観的・批判的に書いている。ある意味皮肉を込めて書いているような気もするのは私だけであろうか。

経営理論はこの世にごまんとあるのだが、本書ほど異端となった本はない。経営理論を勉強している方であれば即刻手に入れてほしいものである。今までの経営理論の考え方が180度変わる。