教育格差の真実~どこへ行くニッポン社会~

本書は教育問題に関して教育評論家の尾木直樹氏と経済アナリストの森永卓郎氏の対談をまとめたものである。

教育問題について様々な提言があるのかと思ったらほとんどが批判ばかりで救いようがないほどコテンパンにしているようにしか思えなかった。

まずは森永氏の発言

「日本は間違いなく壊れると思ってるんです。おバカな学者たちが、少子化対策として…」(p.13より)

誰のことを言っているのだろうか。もしかしたら自虐的に言っているのかもしれない。
さらに尾木氏の発言

「経済の評論家の世界というか、学者の世界も現状肯定か容認論なんですよね」(p.39)

誰も現状を肯定したり容認したりしていない。現状はまだまだ言いにしてもこれからのことを考えて変えなければいけないというのが尾木氏の言う肯定論や容認論の意見である。

続いて第2章では和田中学が行った「夜スペ」について批判を行っている。「公立中学校の民営化・私物化」を批判しているが、では公立中学校がどれも同じ画一的な教育を行ったほうが両氏にとってはいいのだろうか。和田中の「夜スペ」の内容についての言及はあまりなかったが、夜スペの内容を吟味したうえで議論したほうがいいのではと思う。ちなみにこの夜スペを実行したのは現在大阪で教育関連における特命顧問を行っている藤原和博氏である。大阪の学力は「全国学力テスト」でも見る限り低い位置にいることは明白である。橋下知事が教育の底上げを図る有能な人物として推薦を行い、地方での教育改革を行っているわけであるからこれから大阪の教育についても見ておかなくてはと思う。

また教育格差というのは解消していかなくてはいけない問題である。しかし完全になくしたほうがいいとは私は思わない。みんなが同じ学力で同じ力をもって卒業するということを人間が機械になっているように画一的になっているようにしか思えない。優劣の差が付いているからでこそ個性があり、そのうえでの競争が成り立ち、お互いに切磋琢磨ができるのではないのだろうか。

最後に改めて教育格差とはであるが、これについてはまだ変わる気はない。「ゆとり教育」や「詰め込み教育」と提唱する論者は子供たちをどう考えているのだろうかを知りたい。世界的にも恥ずかしくない人材を育てたいのか、子供たちがもっと楽しく勉強に興味を持てるようにするという意図さえもわからない。でもわたしが考える教育問題の解決の糸口の一つは後者ではないだろうか。学力テストやPISAというのはむしろそれを測るバロメーターの1つでしかない。子供たちが勉強をする、そして「知る」ことの楽しさをいかにして伝えていけばいいのかというのが真の「教育問題」ではなかろうか。