日本経済のしくみ

日本経済の今現在の仕組みについて書かれているが、本書が出版されたのが、今年の5月ごろである。そのあと、リーマンブラザーズの破綻により急激な株価の下落、急速な円高などにより私たちが想像をはるかに超えて経済は減速した。

本書は日本経済の仕組みを8章構成で解説しているが、出版が半年前であるので現在の状況を交えながら説明していこう(どれくらいリンクできるかどうかは分からないが)。

第1章「日本経済のいま、がよくわかる!」
もうすでに終わったがこれまでは「戦後最大の大型景気」と呼ばれていた。その景気拡大は2002年の2月から始まったが昨年の夏ごろに終焉した。それでも約5年半にも及ぶ好景気だったが、私たち消費者にとっては「実感無き好景気」であったことは忘れてはならない。小泉政権下での経済改革によることでそのことによる所得「格差」の拡大、地域「格差」の拡大が露呈した景気であった。現在のように急激に経済が減速しても、この「格差問題」は生き続けている。ただ資本主義というのはそういったことを甘んじていかなければ成り立たないのは事実であるし、それでも日本は世界から比べたら格差は小さい。だからと言って楽観しすぎるのもよくない。富裕層にかたまりすぎて、庶民たちの層にお金が回ってこなければ消費活動もできなくなるし、それが経済減速の引き金となりかねない。だからと言って格差縮小をやると日本人特有の行動「預金・貯金」に走ってしまう。ではどうすればいいのやらと考えると、「思考のデフレスパイラル」に陥ってしまう私がいる。ただ今回の経済の減速は失業といういやなものを背負う反面、原油高が落ち着き、スーパーなどでは「円高還元セール」を行っている。そう考えると景気が良くなってもいいところもあれば、減速してもいいことはあるようにも思える。

第2章「日本の企業はどんな問題に直面しているか、がよくわかる!」
年功序列が崩壊し成果主義がどんどん入ってきたこの時代、「キャリア」という言葉も頻繁に使われてきており、もはや企業が人を育てる時代ではなくなり、自分自身で力をつけていかなければいけない時代となった。出版業界は軒並み倒産が相次ぎ発行部数も減少している今ビジネス本が人気を集めている。私のいく書店ではランキングもあるが、そのうち何冊化はビジネス本である。それだけ勉強意欲を見せなければこの時代はやっていけないという証拠であろうか(そういう私もその一人である)。転職も当たり前と化しており、これから雇用の流動化は避けられないだろう。企業は「株主重視」となってきているのは事実であり、社員の給料はなだらかに右肩下がりしているのに対し株主配当は右肩上がりを続けているという現象を起こしている。株主の役割が見直され始めたその一方で、会社法とリンクするが外国投資ファンド(スティール・パートナーズなど)が軒並みM&Aにかかってくるのも事実であるが、現時点で成功した例は2例しかない(ケン・エンタープライズとソリッドグループホールディングス、M&FCと日本精密)。さらにその買収や合併を恐れて上場しない株式会社(非上場企業)が増えているのも事実である。

第3章「日本の銀行・証券はいま、がよくわかる!」
2000年にいわゆる「金融ビックバン」が起こりメガバンクが次々とでき始めた、金融業界では「許可制」から「登録制」となり次々と銀行が入ってきた。コンビニを中心とした業界も銀行に参入してきたというのもある(「セブン銀行」がそう)。こういった業界を変えた要因は小泉改革、ホリエモン、村上ファンドが関わっていると言っても過言ではない。ただFX等の投資も最近では多くなり、投資に関する本も多くなったのは金融商品が簡単に変えるようになった恩恵なのか。

第4章「日本の財政はいま、がよくわかる!」
日本の借金は850兆あると言われている。収支の比率からすると異常である。しかしこれでもやっていけるというのはなかなか恐ろしいもので、どこかへそくりみたいなものがあるのだろうか邪推をしていたら、元財務官僚の高橋洋一氏の「埋蔵金」があるということに発端となりそれを利用して経済成長によってこの借金を返済していこうとするいわゆる「上げ潮派」が誕生した。本章では国債のでき方や国の予算のできた方について解説されている。

第5章「日本経済を取り巻く話題、がよくわかる!」
「少子高齢化」「人口減少」「年金」「地球温暖化」といった問題について書かれているが、もっとも今では「雇用問題」と言ったほうがいいだろう。むしろ本書が出版されるときでも「日雇い派遣」などの問題も抱えているような「雇用問題」はネックになるのではと考える。ここでは「地球温暖化」であるが地球温暖化を防ぐ手段はあるのかと模索しているが、結果的にはCO2削減ばかりが表に出ている。ではこのCO2を減少したらどうなるのかというのも根拠が薄く、もしかしたら別の所に原因がある(別のガス、もしくは太陽光など)のではと考える論者もいる。しかし今はまだ論議が行われているからいいが、少し前まではこの地球温暖化懐疑・否定論を見つけることさえ難しいほどであったため、盲信的に信じてしまう人がほとんどであった。こういった議論が活発になっていく方が地球温暖化解決に向けていいのかもしれない(ただし何らかの対策は講じなければいけないのは事実である)。

第6章「日本の経済政策がいま、がよくわかる!」
本書を読むよりも今のほうがホットなのはここだろう。今麻生政権下では「定額給付金」というのが話題となっているが、相次ぐ失言問題などのゴタゴタで雲散霧消と消えるような感じがしてならない。もっともそういうのはメディアの煽動が大きなウェイトを占めているように思えるのは私だけか。
さて「定額給付金」であるが、ある種の「バラマキ」であるのは間違いない。昔のことを知っていれば「地域振興券」に似ても似つかぬようなものである。一人当たり1万2000円もらえるという優れモノであるが、私は「受け取らない」。受け取らなければ国庫に返るがむしろそのほうが私としては良いと思う。私自身1万2000円をもらえるのはうれしいが、働いてもらう方がまだ良い。働かずして国の事情でもらうというのは自分としてもプライドが傷つくような感じがしてならない(ほかにももっと理由はあるが)。

第7章「日本経済をどう変えなければならないか、がよくわかる!」
「構造改革」「郵政改革」「道州制」と言った改革について触れられているが、最も変えられるものは「政権交代」であると私は思う。実際に衆議院解散総選挙は先延ばしされておりおそらく来年の3月にやる見通しだ がこれを逃すと任期満了になる可能性は非常に高くなる(任期満了は来年の9月)。しかし与党の公明党はそれを許さない。というのは公明党にとっては来年に行われる都議会議員選挙がある。それと選挙を重ねたくないというのがあるが、過去に都議会議員選挙と総選挙が近い日にやった時は決まって自民党が勝っているデータがある。それを狙っているのかという自民党幹部の考えもあったりして。

第8章「グローバル化の中の日本経済の課題、がよくわかる!」
サブプライムローンの焦げ付きにより景気が減速し、ドルの信頼も失墜した。中には基調通貨はドルからユーロになるのではという人もいたほどである。昨今アメリカは経済大国となったが、EUの巨大化、そしてBRICsの経済成長によって脅かされているのも事実である。日本にとっても他人事ではなく、中国に追いつかれそうになっているが、「グローバル化」と呼ばれている中で日本はどうすればいいのかと考えても、国際的な風にどうかすればいいのかというと私はそうではない。むしろ日本が煽動することが先決なのではと私は思う。