リーダーシップの本質―失意から成功への回帰

リーダーシップというのは一体何なのかというのがあまり定まっていない。例えばカリスマ性がある、統率力があると言ったものがある。さて本書ではリーダーの本質として失意から成功への回帰を描いている。

序章「リーダーの資質」

「リーダーシップの本質は、ある意図した方向への献身に、理念を付加ないし強化し得る感化力にある」(p.1より)

まずリーダーシップの本質の根本をこう主張している。リーダーシップというのはあるビジョンに向かってその理念を考え、それを強化していこうと自ら感じ取り、それを実行していくことである。ただしこれは上っ面においてできるものではなく、自分のあるべき姿に向かって努力していくことこそリーダーシップとなる。ただし、そのためには希望を持つことが必要であるが、希望のない人に「希望を持て」と言われるとそう出るわけがない。ではそのリーダーシップの本質をどう身につけていくか、希望をどう身につけていくのかということをこれから見ていく。

第1章「失意の意義について」
本書で書かれている限り、失意というのは2通りあり、苦悩の中で制約を見出してしまいどんどんマイナスに陥ってしまうこと、克服のあとに陥る失意がある。プラス・マイナス両面で起こりうる失意であるからそれはまず避けようがない。では前の状況をどう改善していくのかというのがカギとなってくる。それは理念を持つことにほかならない。そこから大目的が生まれる。そしてそこに向かってまい進していくことで、万が一失意に遭ったとしても乗り越えられるために切磋琢磨するだろう。

第2章「合理性のリーダーシップ」
ここからリーダーシップを4つに分けて説明している。まずは合理性についてであるが、おそらくこれが最も難しいところになるだろう。というのは哲学的なところも絡んでいるためである。ここではあまり難しくないところをピックアップしながら見ていくことにしよう。リーダーシップとしての動機づけにしてどのように形があるのかというのを以下の4つを挙げている(pp.53-55より)。

1.「独善的専制型」
2.「温情的専制型」
3.「相談型」
4.「参加型」

どれもリーダーシップであるが1.は完全に個人独裁そのもの、2.もそれに似たようなものである。カリスマ性などを発揮できる人がなるだろうが、それにより人望が亡くなってしまう危険性をはらんでいる。3.4.はチームとしてであれば非常に効果を発揮できる。上下関係を気にせずに下の者たちは自由に議論や参加ができる。自分自身が府の責任をすべて背負えばなおいいかもしれない。

第3章「向上性のリーダーシップ」
向上性を重視しメンバーの向上を手助けするリーダーシップのことを指す。さてこの工場の手助け、向上の促進を図るにはどうすればいいかという動議づけが必要である。向上の動機づけにもまずこう言ったやり方がある。

・「殉教的精神への教導」
・「利己的精神への教導」

前者はいかにもカルト宗教的なネーミングになっているように感じるが、実際に前者は「社会的使命感」の向上のために役立つ。一方後者の教導は文字通り「利己的欲求」に傾く。これについては今となってはどちらでも構わなそうではあるが、やはり前者の「殉教的精神への教導」はなくてはならないだろう。
もう一つ、組織行動においては失敗と成功は当然ながら存在する。しかしこれについては扱いようによっては毒にも薬にもなる。成功は向上心があれば自信につながるが、傲慢や油断すれば堕落につながる。失敗は向上心があれば本質への回帰や自己再認識につながるが、自信喪失や委縮になれば堕落する。成功と失敗はつきものだがそこからどうするべきかが大事となる。

第4章「至高のリーダーシップ」
「至高」という言葉は何とも難しくもあり高貴な響きであろう。さてここで言う「至高」とは一体どのようなものなのかというのも知りたくなる。単純に言うとある使命感を持ったチームが一体となっていけるように向けることを指す。そしてその使命を創出させるためには、崇高な理想を立てるか、プロ意識の醸成をさせるのかというアプローチがあるが、前者としての例に本書では日本軍の例を多くとらえていることが非常に面白い。今メディアをはじめ左派論客、中国・韓国などでは忌み嫌われている存在ではあるが戦争中の日本軍ほど、目的達成のために一致団結して一体となって戦ったものはいなかった。諭す時・叱るはほとんど精神論ばかりであったもののそのことにより兵士を高揚させることには十分に役立った。日本人であることを誇りに持ち、日本人であることで潔く死んでいった戦士たちもいた。リーダーシップを語る上で日本軍論を語るというのもちょっとおもしろい。
そしてちょっと気になる一文を取り上げる。

「ドイツ・オーストリアの連合軍に敗れたデンマークは、失意の中にも敢闘精神を奮起し、狭められた国土の開拓に粉骨砕身の努力を傾ける。ユトランドの悔恨によって、狭められた国土の富は著しく増大する。剣によって失ったものを、鋤と鍬をもって取り返した根底には、戦いに敗れても精神に破れなかった民族性がある」(p.144より)

これは内村鑑三の講演似て話していたことであるが、これについて日本も似た現象があった。千五ものが自由に変えなかったときから急速に経済を成長し、今やGDP世界第2位となった。学力も今ではフィンランドなどの北欧諸国に後塵を拝することになったものの今でも上位をキープしている。武器を捨てた代わりに経済と学力で世界に打って出たのである。しかしその経済も減速し学力低下も叫ばれているが、今度はどの力で世界に対抗していくのかを模索する必要がある(私は「精神」を模索するべきだと思う)。過去の栄光に酔いしれる暇などないのだから。

第5章「理念実現のリーダーシップ」
理念はいろいろある、社会的理念と、自己実現のための理念というのが存在する。しかし企業や組織の中で生きていく上で、企業をどうするのか、スケールは大きくなるが経済的な視点から国をどうするべきかということも理念に入るだろう。

第6章「結論」
リーダーシップというのは何なのか、リーダーシップをどのようにして身につけるべきなのか、どのようなリーダーであるべきなのかというのはそれは本書を読む限りでは自分次第であるといいようがない。本書はあくまでリーダーシップというのを考察している1冊である。