エリー(C)―茅ヶ崎の海が好き。

昨年の8月のライブを最後にサザンオールスターズは無期限の活動休止となった。ファンである私は再び「サザンオールスターズ」が復活し、ライブを行い、シングル・アルバムを出すことを切に願っている。

サザン関連と言ってしまうとかなり失礼だが、本書の著者はあの桑田佳祐の実姉であるが、この方は本書を完成して10日後に帰らぬ人となった。つまり本作は史上唯一の桑田佳祐、及び茅ヶ崎についての自分自身の話を一冊にしたものであるということを考えるとそれらのことについて解明できる唯一無二の一冊と言ってもいいだろう。

序章「息子の誕生」
第一章「茅ヶ崎の姉と弟」
著者は1952年に誕生した。桑田佳祐が1956年と考えると3歳違いになる。この章では著者と弟の桑田佳祐の生い立ちについて書かれている。小学校時代の時のエピソードで「かえるの歌」を姉弟が追いかけっこして歌うところなのだが、この話を読んだ限り著者自身、弟が日本を代表する歌手になるということは予想だにしなかったであろう。さらに面白いことに小学校の時、洋楽にはまっていたのは姉の方でとりわけビートルズのファンだったということには驚いた。それにまつわるエピソードについても書かれている。桑田佳祐、もといサザンオールスターズの曲は洋楽を参考にすることが非常に多く、洋楽の歌もライブで披露されるが、姉の影響でということも考えられる。

第二章「カーメルの海」
ここではアメリカに通訳として滞在していた時のエピソードについてつづられている。「カーメル」というのはアメリカ西部のモントレー半島の南部にある街で、きれいな海で有名なところである。本書でもこの「カーメルの海」についてしばしば取り上げられている。ちなみに著者がこのカーネルに滞在していたのは70〜90年代の時である。70年代というとサザンオールスターズがデビューした時であり当時では「勝手にシンドバット」や「いとしのエリー」というのがある。余談であるがこの「いとしのエリー」の「エリー」は著者に由来している説があるほどだ。当時の結婚式ではこの曲がよく歌われており、「エリー」の部分を自分の妻の名前に変えて歌ったそうだ。

第三章「サザンビーチにマンション!?」
著者は96年にアメリカから帰国して茅ヶ崎に戻った。それから9年後の2005年には巨大マンションが建設されるということで、その反対運動の活動に尽力した。このマンション建設予定地が茅ヶ崎の名所「サザンビーチ」に建てられそうだという。「サザンビーチ」というと夏には海水浴客でにぎわい、晴れた日には富士山を一望できる。しかしそのマンションの建設予定地はそこの近くであり、もしマンションが建ったらこの富士山を一望することができなくなるほど巨大なものであった。その反対運動「はまけい(茅ヶ崎・浜景観づくり推進会議)」は署名活動を中心に行われ、(業者側と)果敢に戦い、そして約1万8千もの署名が集まり、工事は中断されたという。この反対運動については私は耳にしたのだが結局署名はしなかった。そう言う声がかかってこなかったからだ。とは言っても私は茅ヶ崎に行ったことはないのだが、サザンファンである私にとって「茅ヶ崎」はまさに「聖地」というほかないと思う。サザンの曲でも茅ヶ崎や「サザンビーチ」を舞台としている曲も多数存在する。もし時間がとれたら1度は行ってみたいと思っている。

弟、桑田佳祐への思い、故郷茅ヶ崎への思いというのが伝わる一冊であった。
最後に本書の著者、岩本(旧性:桑田)えり子氏のご冥福をお祈りいたします。