親馬鹿力のおかげです―福を呼ぶ、人の育て方

「気をつけろ 黄色い着物が やってくる」

一昨年の秋に林家木久扇・木久蔵のダブル襲名し、名実ともに「馬鹿親子」をほしいままにした。「笑点」見ている人であればわかるだろう。

本書はその親子の生い立ちと共に木久扇の子育て指南をする一冊である。「抱腹絶倒!」とまではいかないが、面白おかしく書かれており、今の子育ての現状にたいして暗に一石投じるようであった。

第一笑「こんな親だけど、よろしく」
ここでは木久扇師匠がダブル襲名に至った喜びについて、自分の生い立ちについて書かれている。木久扇師匠自身の素直な感情が書かれており、「バカ」を演じている木久扇とは一線を画している。

第二笑「育ててくれて、ありがとう」
今度は息子の二代目木久蔵がみた親・木久扇の背中がこの章で書かれている。木久扇は直接会ったことがないが落語といい、笑点といい嫌われる人柄じゃないとあるが、まさにその通りである。木久扇自身が醸している雰囲気で笑わせることができる力をもっている。「噺家だから」というのもあるかもしれないがそう言った雰囲気を持つ人というのは私の見た限りでは少ない。木久蔵はその背中を見て噺家になった。だが木久蔵は「木久蔵伝(主に父・木久扇のものまね)」以外は古典落語を行っている。その転機というのも本省に書かれている。

第三笑「親馬鹿力・八つの力」
いきなり「親馬鹿力検定」である。全部で8問あるが購入した方は正直に答えてください。著作権の関係(というよりも個人的な理由)で公開しない。だがこれだけは公開する。「八つの力」についてである。本「笑」で出てくる「八つの力とは」

「かわいがられる」
「自分を好きになれる」
「自信をもてる」
「失敗を恐れない」
「自分をコントロールできる」
「人から信頼される」
「親の器を超えられる」
「幸せになれる」

である。

第四笑「春風亭小朝師匠に聞く、林家親子の親馬鹿」
「バカ親」と「木久扇・木久蔵親子」の違いとは一体何なのか。「バカ親」というと自分の息子に対して英才教育を受けさせる。そして親は自慢話の道具にする。後者の親子はほめて・かわいがって・自信を持たせて、それでいて何をやらせてもいいという良い意味での放任主義である。

第五笑「うちの親馬鹿力は不滅です」
よく今の子供、若い者には礼儀がないという言葉を聞くが、では礼儀は学ぶものかというのかというとどうやら本書を読んだらそうではない。「礼儀は自然に身につくもの」だという。子供は親の背中を見て育つが如く、親が礼儀正しくやっていれば、子供は自然に身に付けられる。だからこういった勉強というのは親から礼儀正しくすることから始まるのではないかと。

最近では「親が嫌い」とか親が共働きや親の事情で親からの愛を受けとれない人たちが多い。親とのコミュニケーションというのはかけがえのないものであるが、いざやってみるとなると難しい。この木久扇・木久蔵親子のような子育ての方法は、周りから見ても面白く、それでいて子供にとって正しい成長を促せられる方法である。子育ての本はあまり読まないが自伝というよりも、子育ての在り方について勉強したい人のほうが対象になるだろう。