秘花

瀬戸内寂聴と言えば「源氏物語」の現代語訳として有名であり、本書のように時代小説や恋愛小説も手掛けている。最近ではケータイ小説も1作チャレンジしたが、1作で懲りた模様である。

それはさておき本書は世阿弥の晩年について書かれている。世阿弥の晩年というと1434年に佐渡国(佐渡島)に流刑されたところから本書のストーリーが始まる。かねてから信頼されていた足利氏が代替わりを機に弾圧を繰り返され、見放された。そう言った絶望感が佐渡国において吐露している。

しかし佐渡国に流れた世阿弥はその土地の人情に触れ、大成したの修行をやめなかった。本書を見るうちでは必ずしも「非業の死」とは言えない。

世阿弥については多くの作品や研究本があるが私自身世阿弥という人物は名前しか知らない。本書は世阿弥の心情や背景は分かるが世阿弥の全貌までは見えてこなかった。世阿弥の晩年だけを見てみたいのであれば世阿弥に関する入門書を読んでから読んでいくとすんなりと本書の世界に入っていけるのかもしれない。

世阿弥の晩年の部分について書かれているが、本書を介して調べてみておくのが世阿弥の生涯のみならず「能・狂言の歴史」、「足利義満から善政までの時代背景」という課題が出てくる。そう言う本をいくつか読んで勉強したら本書の細やかな世界がもっと明瞭になってくるだろう。