ジャパンクールと江戸文化

ジャパンクールについては取り上げたばかりで(「ジャパンクールと情報革命」)、しかも江戸文化と共通するところがあるという考察がされている内容も含まれていたのだが、偶然というのは恐ろしいものでそれを銘打った本がほかにあった。本書は今大流行している日本アニメ・マンガの「ジャパンクール」とこちらも流行となっている江戸文化の関連性について考察している一冊である。

第1章「ジャパンクールから見える江戸文化」
今や日本文化は世界的にも大人気である。それに加えて日本のアニメやマンガも流行していることから「ジャパンクール(Japan Cool:日本格好いい)」という用語が誕生したほどである。マンガ・アニメばかり取り上げるが今回はちょっと角度を変えて落語・歌舞伎と言ったところをついていこうと思う。
近年は「タイガー&ドラゴン」や「しゃべれどもしゃべれども」というのがあるとおり落語を題材にした作品が使われ、さらにアニメでは「落語天女おゆい」という所から落語に興味を持ち始めた人が増え、「落語ブーム」となった。歌舞伎の世界でも「スーパー歌舞伎」のみならず海外公演を積極的に行うことに外国人の歌舞伎好きも出てきている。この歌舞伎や落語と言った者が今の「ジャパンクール」との関連性についても図に表して説明されているが、「生類憐みの令」と「ペットブーム」は共通点はあるものの、動物を殺していいのかいけないのかというのが決定的に違う(ただし、法律的観点で)。

第2章「コミュニティを再生する江戸文化」
この章はちょっと「ジャパンクール」から離れて江戸文化そのものに目を向けていく。「こんぴら歌舞伎」などによるまちづくりから、昔からあるコミュニティの象徴である「祭」について取り上げられている。戦後日本のコミュニティは疎遠になってしまっているが、こうした文化を基軸にして再形成、もしくは復古していくこともまた在りし日の日本に戻るための一つの手段で香川県琴平町で毎年公演されているという。「金刀比離宮」の文字をとって「こんぴら(金比羅)」と呼ばれるようになったのだが、琴平町も「こんぴら」と呼ぶことができると思ったのは私だけであろうか。

第3章「ジャパンクールとしての江戸文化」
ここでは「ジャパンクール」と「江戸文化」の関連性について書かれている。「ジャパンクールと情報革命」でさんざん説明しているので省かせていただく。

第4章「江戸文化の「モエ」の構造」
「萌え」とは一体何なのかという人が多いが、なぜか辞典に明記されているようだ。それの語源については「燃える」という所からきているようだが、私なりの解釈ではおそらく「草木が萌える」というのが語源ではなかろうかと思う。

第5章「京都・大坂・名古屋のコンテンツ戦略」
コンテンツ戦略と言っても本章で言っているのはアニメ戦略ではない。3つの場所独自の上方の文化をどのようにして売り込むかという戦略のことを言っているところである。

第6章「江戸という近未来」
江戸時代は近未来の日本とほぼそっくりであるという。江戸時代はどのような社会だったのかということについてはまだ学者の間で見解が様々であるが、今なお残っている日本の社会構造の問題に一筋の光を見出すことも可能なのがこの江戸時代ではなかろうか。

「クールジャパン」と見た瞬間、正直言って「またか…」という感じは最初だけで中身は、アニメ・マンガに限ったことではなく、歌舞伎や落語といった江戸時代から根付いている文化全般に際して本書では紹介している。そう言う意味では新鮮味があった。