時の歩みに錘をつけて

本書はニューヨークでレストランを経営している方が書かれた長編小説である。著者は単純に計算する限りで67歳であるわけだが、彼の自伝的作品と言っても差支えないと私は思う。

本書のタイトルにある「時の歩みに錘(おもり)をつけて」だが著者が生きた約67年間の歩みにどのような「錘」と書いてあるとおりにどのような重みが付けられていたのかというのがひしひしと伝わる作品である。アメリカに限らず世界中様々な国を旅し、その中で数多くの体験をしてきた。

本書の中である質問に関しては考えさせられた。イエス・ノー形式である。

1.税金や財政などの問題でアドバイスが必要な時は男のところに相談に行く。恋愛問題でアドバイスが必要な時は女のところに行く。

2.ソフトな声で話す女は上品でいいが、ソフトな声で話す男は弱々しそうで政治やビジネスに向かない。

3.他人、特に同性の人間と抱き合うのは気持ち悪い。

4.男と女が同じ車に乗るときは、男が無能力者ではない限り男が運転すべきである。

5.離婚や別居のとき、もし女が子供を引き取りたければ、子供は自動的に女のほうにゆくべきである。なぜならば女の方が子育ては上手だから。

6.女を保護したり女のために物を提供するのは男の義務である。なぜならば女の方が男より弱く、脆いというのは生物学的事実である。

7.男の方が政治に向いている。

8.子供のことか妻の仕事に関すること以外は夫が決定を下すべきである。(pp.87-89より)

答えに関しては本書を参照されたいが、それはないだろうというのがほとんどであろう。ちなみに答えは伏せておくが「もしもあなたがイエスと答えたなら…」という文切りになっているところから全部が「ノー」という方が正解だろうというのだろうか出題者は。

世界を旅したことがほぼ中心に書かれている作品であるが、著者ならではの心情の描写がなかなか面白い。量も多くそれでいて研究本並みの大きさであるが、案外読みやすく書かれているため、あえて苦難があるとするならば持ち運びづらいという所くらいだろう。