教育破綻が日本を滅ぼす!

教育問題は今もなお、深刻な問題として位置づけられている。その教育問題について数々の著書を上梓し続けているのが教育評論家の尾木直樹氏である。本書の副題は「立ち去る教師、壊れる子ども達」である。今回の教育問題について教師、子ども、そして教育委員会の3つの側面から教育の現状を取り上げ、それを踏まえて「教育委員会改革論」を説いている。専ら「教育委員会」について割かれているところから「教育委員会論」というような名前でも差支えなかったと思う。

第1章「壊れゆく教師と子ども――誰のための「教育改革」か」
教師のモラル欠如、子供らによる学級崩壊、いじめの陰湿化、モンスター・ペアレント…、
今TVなどで話題となっている教育問題について挙げてみたら枚挙に暇がないほどである。そうなってしまった根本原因、尾木氏によれば教育委員会によるものだろうという結論に至ったという。

第2章「子供の心が見えない教育委員会」
さてここからは教育委員会の現状について3章にまたがって取り上げている。
ここでは「佐世保小6女児同級生殺害事件」での教育委員会の対応の杜撰さを他の事件を例に出して扱き下ろしている。

第3章「教師もうんざり――教育委員会との対応」
大分の教師採用をめぐる汚職事件をはじめ、全国学力テストをめぐって大阪などでは知事と教育委員会との激しい対立がある。
その他にも教育委員会にまつわる教師側にとっては命令ばかりする機関、もしくは書類ばかり送られてくる機関のように感じているという。
とりわけ教師たちにとって一番の重荷となっているのは文書である。数も膨大であり、中には期限の厳しいものまであるそうだ。

第4章「「教育偽装」事件簿――密室の中でのヒエラルキー」
教育偽装の実態について明らかにしているところである。

第5章「教育委員会ってなに? 教師の期待は?」
これまでずっと批判してきたがここでは「教育委員会」の仕組みについて解説している。

第6章「今こそチェンジ! 教育委員会――尾木直樹「5つの提言」」
尾木氏の本というと大概は批判ばかりで終わるのだが、本書はそれだけではなくこうしたらよくなるのではないかという5つの提言をしている。この5つを挙げてみる。

1.もっと現場の声を聞け!
2.教育にもっとお金を!
3.教育委員会は全力で教師をサポートせよ!
4.風通しの良い教育委員会にせよ!
5.議会からきっぱりと分立せよ!

最後によれば、本書はわずかな時間で仕上げた緊急出版という形であろう。短期間でありながらアンケートの集計やそれにまつわる声の編纂は評価できる。

しかしそれを踏まえての提言は私から見て斬新さがほとんど見られないように思えてならない。