日本人の愛した色

色というのは不思議なものである。動物が生活をしていく上で最も扱いやすく、最も喩えられやすい。

本書のタイトルは「日本人の愛した色」であるが、もともと日本の文化は「視覚」によって築かれた文化であるだけに「色」というのは非常に重要なウェイトを占める。「色」を調べるとなると文化そのものを調べられるので本書のように選書の形式で納められたこと自体が奇跡だと私は考える。コンパクトになった「色」にまつわる日本文化史を本書とともに解き明かしてみよう。

第一章「赤への畏敬」
」というと漢字では「紅」や「朱」という表現でき、それぞれで意味が違ってくる。その色には情熱の色や血の色と言った高揚感を持たせたり、政治的に言うと共産主義・社会主義の意味も持つことができる。
日本では「赤飯」のように祝い事(もともとは邪気祓いを意味していた)にもよく使われる色である。
紀元前に活躍した哲学者ヘラクレイトスも「万物は「火」である」と唱えており、赤がどれほど重要な位置づけをされているのかというのがわかる。
著者は染色家という立場から色を見ているため、紅花の渡来や庶民文化にまつわる赤色着物の文化についてが詳しい。

第二章「高貴な色となった紫」
何年か前だが、とある番組にて「は観音様の色」だったり、「紫は千手観音の色」と言われ「慈愛」を象徴すると言う人がいた。章題では「高貴な色」と書かれているがこれは高貴なクラスが纏う衣装に紫が多かったことからであるという。
その反面、孔子は中途半端な色、イタリアでは不吉な色と称され忌み嫌ったという。
日本で代表的なものというと「源氏物語」は紫づくしというべきだったそうだ。おそらく日本における「紫色」の文化が始まったのはここの時なのかもしれない。

第三章「多彩な青と緑」
本章と第四章では2色ずつ紹介される。
ここではである。自分自身これらの色は好んでおり、小さい頃シャツであったりトレーナーやズボンはこの色を好んで着ていた。ジーンズでおなじみのデニム素材もおおむね青である。本書では古来から使ってきた藍(青にちょっと緑が入っている)や瑠璃色(こちらはちょっと赤が入っている)。青というと親しみやすい色ではあるがそれに関するルーツがあまりなかった。
次は緑ではあるが、なぜこれとつながっているのかというと信号機は野菜に関して「青」と表記振るものの中に「緑」があるということが理由なのだろうかと考える。

第四章「仏教の黄、魔力の金」
黄色というとこの方を思い浮かべるのだが…、それは置いといて、黄色というと信号では「注意」という意味をあらわす。古代中華王朝の皇帝を表す色とした重宝される。
仏教の「黄」を表す表現としては「畜生(六道十界の一つ)」を表す色として考えられており、ネガティブなイメージとして使われている。
続いて「金」だがこれは「黄金の国ジパング」という印象が強い。
諸外国ではそう呼ばれていたのだがこれはマルコ・ポーロの「東方見聞録」とされているが、当時の宋〜明の時代における中国大陸の人々から見聞きしたものと言われている。そのため当時の日本の現状との齟齬も多い。

第五章「町人の色、茶と黒」
「町人の色」というとあまりピンとこないのだが、お茶によるもの、もしくは日本独自の「侘び・寂び」の文化に直結しているように思える。

色は探っていくと宗教や日本文化に直結しやすい。色彩を意識することは日本が育んできた文化なだけに「色」はいかに重要な要素であったのかわかる。