おふくろとお母さん -古今東西 母にまつわる物語-

本当だったら、本書は5月10日に紹介すべきだった。
本書を手に入れたのがちょうど昨日。あまりにも遅すぎた「母の日」にまつわる本の紹介。悔やまれる…。とはいっても来年に延ばそうかというとそうにはいかないもので、結局今回紹介することとなった。

私情はここまでにしておいて、本書は古今東西の「母」にまつわる物語について紹介した一冊である。主役となった人の母親像、母として戦ってきた女傑、息子のために冷酷になった母、いろいろな「母」がここでは紹介されている。

第1章「母にまつわる物語」
全人類の「母」から始まっているところから本書の壮大さが見て取れる。
「母」の言葉の意味というのもあるが、そもそも大地といったものは必ずといっても「母」とつくのだろうかというのが頭に残る。
しかしよくよく考えてみたら理由は簡単であった。「「母」によって(私たちのような人間や動物)生まれるのだから」である。

第2章「この母にしてこの子あり――日本史の主役たちの母の素顔」
さてここからは有名な「母」の話に入っていく。本書では、徳川家康、綱吉、豊臣秀吉といった歴史上の人物から、画家の岡本太郎まで母の力によって育ったというエピソードについて書かれている。それで言うともう一人取り上げなければいけない。
ドクター・中松である。
本書では取り上げなかったが、自書にて母の偉大さと母からもらった言葉について赤裸々に描かれている。

第3章「母として女として――哀しみを胸に時代を駆けた母たち」
こちらは猛女という印象が強いように思える。とりわけ北条政子や月光院左京を取り上げているくらいであるから本章で紹介された女性は勇猛果敢なのかなと邪推してしまった。
しかしその勇猛果敢は哀しみから立ち上がり、それを打開しようとして奮起したわけであるから勇者というよりも悲劇のヒロインという印象のほうが強い。

第4章「母の力は大きかった――賢さとしたたかさで名を残した母たち」
ここでは、息子の名を上げるために奮闘し、歴史に名を残した母の姿についてである。第2章と違う点は、「母親自身が歴史に名を残したかどうか」である。とりわけ前田利家の妻「まつ」や、大奥の実力者となった「春日局」が代表的人物として挙げられている。
特に私の知らなかったところでは織田信長の母「土田御前」、室町幕府初代将軍、足利尊氏の母「上杉清子」が印象的であった。

第5章「世界史を騒がせた賢母・猛母たち」
今までは日本史ばかりであったが今度は世界史に目を向けている。
孟子の母や、マリア・テレジアアン・ブーリンもさることながらナポレオン・ボナパルトの母、「レティツィア・ボナパルト」、ハプスブルグ家における悲劇のヒロイン「皇妃エリザベート」まで紹介されている。

第6章「母の「ことわざ・名言」と「昔話」」
ここではことわざや名言などの母にまつわる故事成語について紹介されている。特に儒教や歴史では男尊女卑とはいえ「母」の強さについてまつわる名言は数多い。

歴史には様々な偉人が描かれる。なぜ偉人になりえたのかというのは、ひとりだけでは為し得ることはできない。とりわけ母が支える力によって、偉大な功績をあげたという偉人も少なくないというのは本書を読んでいてもよくわかる。
私もそうだが「母の力」というのは偉大である。毎年のように感謝をする心を持つべきである。