スーパーセールス姉妹 知栄と佳栄―「母」から受け継いだ豊かなこころ

先週金曜日のセミナーにおいて、祐川京子氏から献本御礼。
巷では本書はすごい反響を呼んでいるようである。ちなみに本書では保険営業で30年連続営業日本一の母をもつ娘2人の一冊である。その娘2人もかたや4万人いる営業職員の中で9年連続全国1位(本書が出た後に10年連続1位を獲得された)、かたや5年連続全国2位である。
これまでどのようにして、営業において功績を上げるためにやってきたのだろうか、母の教えとは一体何なのかというのが気になり始めた。さて本書の中身に入っていく。

第1章「生き方を教えてくれた家」
ここでは柴田家の家のことについてしまい対談を行っている。母の子育てと祖母の子育てがどうであったのかというのがよくわかるが、厳しさと温かさがたっぷりと詰まった環境にあったと考えられる。その証拠の一つかどうかわからないが、両者のエピソードを4コママンガ形式にていくつか散りばめられている。

第2章「後継ぎと期待されての入社」
ここでは知栄氏の話である。
母は30年連続日本一となった保険のセールスレディである。試験に挫折をしたショックの後、その母と同じ道を歩み始めたが、保険の知識ゼロで飛び込んだこともあってか、数々の試練に遭遇したそうだ。

第3章「ほのぼのOLから厳しい営業の世界へ」
では妹の佳栄氏はどうだったのかというと、短大卒業後に建設会社のOLとして就職したが、ひょんなことから母や姉と同じ道を歩み始めた。ほのぼのとしたOL時代から、セールスレディとなった厳しさがひしひしと伝わってきた。

第4章「カリスマ営業の母と二人三脚で保険営業」
姉の知栄氏はニューヨークに勤めた後、母と同じ部署に就いた。母と二人三脚で営業をするという毎日の中から、母がなぜ30年連続日本一になったのだろうかというのを学びながらも、自分自身のスタイルを着々と身につけていった。

第5章「働くママはトップ営業」
妹の佳栄氏も母や姉と同じ部署に就いた。ここについてはあまり取り上げられなかったものの、前の部署の経験や業績が生きたように見える。

第6章「すべてはお客様が教えてくれる」
三波春夫の「お客様は神様です」というのだろうと思ったのだが、保険の営業のみならず「営業」というと「人対人」というのが多い。人とのコミュニケーションやセールスの中で、セールスレディとして、さらには人間として学ぶことはたくさんあるということを教えてくれるところであるという。

第7章「トップ・オブ・ザ・トップセールスを目指して」
今や車内で1‐2の牙城を築いている姉妹であるがこれからのこと、そしてセールスレディとしてのあるべき姿を姉妹それぞれが語っている。

母の背中を見ながら、姉妹はトップセールスとして歩んでいっている。母の強さ、その背中を見ながら必死にしがみつきながら努力をしている姿はセールスマンとしてだけではなく、子育ての在り方はどうあるべきかというのを教えてくれるような一冊だった。

余談であるが本書を読んでふと思いついた。
多大な功績をあげた親がいたとき息子はどうなったのだろうかと考えると2つのケースが存在する。趣味の落語の話に持って来るのもあまり気乗りがしないが、日本の落語界において五代目古今亭志ん生は絶大な功績をあげ、亡くなってから30年以上たった今でも万人に愛されている噺家である。ではその子供はどうなのかというと、十代目金原亭馬生三代目古今亭志ん朝共々「名人」と称されるようになったのは言うまでもない。こちらは親のプレッシャーをはねのけ、親に似つかずの芸を磨き大成した。

一方本書の冒頭に書いているのだが、長嶋茂雄の息子である長嶋一茂はプロ野球において目立った活躍はできなかった。「所詮は親の七光」と罵倒される日々だった。ただタレントや実業家として実績をあげてきているので、畑は違うが活躍を見せている。

そしてもう一つ、こちらも落語界であるが三代目桂三木助とその息子四代目桂三木助の話である。三代目桂三木助は「芝浜の三木助」と称されるほどであり、江戸前の芸はまさに絶品である。その息子の四代目桂三木助は早くからTVで活躍し、非常に早い段階で真打昇進となったのだが、名前の重圧と周囲の軋轢が尾を引き2001年に自ら命を絶った。
最後に湿っぽい例を出してしまったのだが、二世や二代目といった人たちは幾度とない批判やプレッシャーにさらされてきたのかというのが分かる。著者のご両人も例外ではなかった。しかし親の背中を見ながらも自らの営業スタイルを確立させ大成した姿がここにある。
営業で悩んでいる人もさることながら、いろいろな世界において「七光り」で悩んでいる人(あまりいないと思うが)に是非読むべき一冊である。