ベストセラーだって面白い

ベストセラーというのはあまり面白い作品が多い。タイトルのインパクトは強いものの中身が伴っておらず、「買って損した」ということが何度もあった。しかしベストセラーでもたまに「当たり」と言えるほど面白いものもあるため、内容はピンからキリまであるが、どちらかというとキリの方が多いように思えるのは私だけであろうか。

本書はそんなベストセラーの面白さについて2001年から朝日新聞で連載を行っていた「ベストセラー快読」という書評コラムを2004年〜2008年までの分をまとめたものである。

「診察室篇」
まずは2004年1月〜2005年12月までのところである。
この時で一番ベストセラーになっていたのは「セカチュー」こと「世界の中心で、愛を叫ぶ」、養老孟司節爆発の「バカの壁」、村上龍の「13歳のハローワーク」などベストセラーぞろいと言ってもいい。当時はあまり本に関して関心がなかった。書評を始めてからは「バカの壁」くらいしかベストセラーは読んでいないのでここに関してはあまりよくわからない。
ただ「バカの壁」は続編も売れ続けており、「バカの壁」自体も400万部以上売り上げている。題名のインパクトが強さ、そして賛否両論の意見がその魅力なのだろうか。

「温故知新篇」
2006年1月〜2007年12月のところである。
この時になるとだんだん読み始めており、書評している作品もある。当ブログでは「千円札は拾うな。」があり、前身の「蔵前トラック」に遡ると「人は見た目が9割」「国家の品格」「ホームレス中学生」を書評した記憶がある。その中でも「ベストセラー」の宿命なのか、内容があまりにもチープで批判ばかりしていたということを思い出した(特に「人は見た目が9割」ではかなり扱き下ろしていた記憶がある)。
しかし本書はベストセラーの良さについて書かれているため私の考えと著者の考えの相違については後ほど語ることにして。

「快読篇」
ここでは連載したものではなく、「診察室篇」「温故知新篇」では取り上げられなかったベストセラーについて取り上げている。TVで言う所の「未公開シーン」ならぬ、「未公開書評」を全部取り上げたというべきだろう。
本章ではベストセラー本もあるのだが、どちらかというとベストセラーの一つ下の「準ベストセラー」と言うべき作品が多く取り上げられている。
この「快読篇」に関しては書評をしたことはないが、読んだことのある本はいくつかある。内容はそれなりに面白い作品がほとんどである。

本書はベストセラーに特化した書評が多かった。ベストセラーをはじめ、それなりに売れている作品というのは新聞や雑誌の書評欄で取り上げられることも多い。というのはそれだけ認知されたことによって識者はこの作品についてどのような評価を下すのだろうか、どのような考えをもっているのだろうかというのを知りたがるという構図となる。
ベストセラーは数多くの人に知られており、読書が嫌いな人でも名前であれば認知することが容易になる。しかし中身はどうかというとタイトルのインパクトが強い分、期待はずれであることが多い。ただ本書はその認識を再考するきっかけを与えてくれた。もう1回ベストセラーを読んでみようという気になれた一冊であった。