水の神秘 科学を超えた不思議な世界

「水」は生物が生きていくに当たり最も必要なもののひとつである。「哲学の祖」として知られるタレスも「万物の根源は「水」である」と唱えたほどである。

しかし、「水」はどこからできたのだろうか、何をもって水と考えられたのであろうかというのはあまり分からず、たとえ知っていたとしても自らの生活の上で何の役に立つのかというのはわからないだろう。

しかし今日は「地球温暖化」と言われて久しく、その影響により食糧危機や「水」の危機というのがある。「水」の危機というのは淡水の不足により、人間や植物が満足に三つを摂取できなくなることを言っている。私は「地球温暖化」についてはあまり信じる人ではないのだが、こういった時代だからでこそ、「水」とは一体何なのかというのを知る必要性が高まってきたのかもしれない。

本書は「水」の存在について歴史、科学、宇宙に至るまであらゆる角度から考察したものである。

第1部「古代の知恵」
第1章「古代神話」
古代神話において「水」を象徴する神は「オーケアノス(水の神の化身)」、「ポセイドン(海の神)」らとされており、日本では天之水分神(あめのみくまり)と呼ばれる神がいる。

第2章「神聖な混沌(カオス)」
水の元素記号は(H2O)である。簡単にいえば水素と酸素が混合してつくられたものである。ちなみにもととなった2つの元素はどちらも気体(ガス)である。このガスはカオス(混沌)を変形して名づけられたものであるため本章では、カオスとしての「水」を考察している。

第3章「現代のナチュラリズム」
時代は大きく進んでルネッサンス、14〜16世紀にまで進む。
ここでは哲学や神話としての「水」から芸術としての「水」について書かれている。
ちなみに第Ⅰ部では科学としての「水」よりも、哲学や神話・芸術としての「水」のためどちらかというと文系の要素が強い。

第2部「水の科学」
第4章「水の起源」
さて、ここから科学的な観点から「水」を見ていく。ここでは「宇宙論」、特にビッグ・バンや惑星の誕生からみた「水」の誕生について書かれている。

第5章「謎めいた分子」
ここでは「化学」としての「水」である。
「H2O」というのが理科の授業でも習う化学式であるが、水素結合によっては様々なものがあるという。

第6章「生命と水」
今度は「生物学」としての「水」である。生物が生きていくに当たり、多かれ少なかれ「水」というのが必要である。DNAや血の循環としての水について書かれている。

第7章「ガイアの循環システム」
最後は「地学」としての「水」である。地球も一種の生物であることを考えると「海の循環」というのが「血の循環」と喩えることができる。
第2部では科学としての「水」と見てきたわけであるが、水そのものと言えるような「化学」的なものは第5章のみで、そのほかは生物や地学、宇宙学に至るまで「水」についてとことん書かれている。「科学」とあるが、「化学」のみならず「科学」に関することを縦横無尽に書いているので非常に面白い。

第3部「古代と現代の出逢い」
第8章「波と渦の科学」
第3部も科学の続きと言える。「振動」や「渦」、「エネルギー」という言葉が出ているところをみるとどうやら「物理学」に当たるところである。

第9章「生きている水を求めて」
ここでは「ネットワーク」としての「水」を考察している。元素や生命、システムとしてどのように運ばれ、循環していくのかというのが書かれている。

第10章「宇宙の仲介者」
本書のまとめに当たるところであるが、章題もさることながら、内容をみると第4章に似ている。

科学的・哲学的と様々な観点からみているため本格的に「水」について考察をした一冊と言える。
学術的な考察のため若干とっつきにくいところもあるのだが、科学のみならず様々な学問を「水」とともに学ぶことができる。一石二鳥・三鳥にもなるような一冊であった。