ラークライズ

本書の著者であるフローラ・トンプソンの自伝的フィクションであり1939年に刊行された作品である。

ちなみに本書のほかにも「キャンドルフォードへ」や「キャンドルフォード・グリーン」とあわせて3部作として1冊にまとめられた作品があり、それによって彼女は名声を確固たるものとした。

有名な3部作の1作目に当たる本書は、自らの少女時代は貧しいながらも喜びも悲しみにも感情に満ち溢れた物語であり、著者自身の体験を元にしている。

第一章「貧しい人々の家」
第二章「子供時代」
第三章「農作業」
第四章「パブ」
第五章「年寄りたち」
第六章「女たち」
第七章「外からの訪問者」
第八章「木箱」
第九章「田舎の遊び」
第十章「村の娘たち」
第十一章「学校」
第十二章「試験」
第十三章「メーデー」
第十四章「教会」
第十五章「村の祭日」
本書のタイトルである「ラークライズ」というのはイギリス・オックスフォード州の北東部にある小さな村である。当時のイギリスはヴィクトリア朝であり、産業革命によって工業が急成長を遂げ、名実ともに列強の筆頭となった時代である。ちょうどこの時に起こった事件は失業者の暴動により、死者が出た「血の日曜日事件」やボーア戦争、アフガン戦争というのがあった。

この時代で有名な作品ではダーウィンの「種の起源」が発刊された時期でもある。

都市部ではまさに絶頂期と呼ばれるほどであったのだが、農村部はどのようなものであったというと、日本の「格差」と似ているだけのこともあり貧困であった。ただし今の日本のように貧困にあえいでいたかというとそうではなく、貧困であったとしてもそこには素朴であっけらかんとした感情が本書にはあふれんばかりに表現されており、読んでいる自分が麦畑の絨毯の真ん中で寝そべっているような感覚になる。

小さな村の生活がそのまま書かれているため小説でありながらも、ヴィクトリア朝における生活の一部を調べられる材料としてもうってつけであり、貧乏であっても生活のできる喜び、自然への畏敬というのが一手に味わえる一冊である。

さらに本書は絵がない代わりに、訳者のブログにおいて翻訳の題材として、数多くの写真を撮ってきたものが載せられているのでそちらの写真も参考にしながら読むと、本書の情景が浮かびやすくなる。

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