飲酒と健康―いま、何を、どう伝えるか

もう20歳過ぎているため飲酒は飲んでも大丈夫なのだが、法律で禁止されているとはいえ未成年でありながらも飲酒をしたという経験のある人は少なくないことだろう。特に祝い事で家族と一緒に飲んだりする人もいれば、大学のコンパで酒を飲むという人もいる。その風潮を考えるとするとこの「未成年は飲酒禁止」というのは、一体何のためにあるのだろうかといささか疑問を持ってしまう。

脳細胞の減少というのが主だった印象なのかもしれないが、本書では他にも害する側面があるという。

第一章「アルコールの基礎知識」
アルコールと言うと適度に飲めば「百薬の長」と言われ、程度が過ぎると「百害あって一利なし」と言われる。
しかし著者にいわせれば「脳を麻痺させる薬物」と言われている。アルコールを悪者にしているなという考えも起きるが、集中力を散漫させる、緊張感を緩和させることを考えればあながち間違いではない。

第二章「飲酒の急性影響」
飲酒は二通りの影響を及ぼす。その中でも本章では「急性アルコール中毒」に属する急性的な影響について書かれている。
私も大学の時に体験したことがあるのだが、酒のなかでもビールやカクテルのイッキから、日本酒や焼酎のイッキまで体験したことがある。今はさすがにやらないし、やりたくもないのだが、一気に飲むことにより、アルコールを吸収しきれずに急性アルコール中毒になり、最悪死に至るというケースもある。一気飲みは絶対禁止とまでは言わないが、相手に配慮をともなって楽しく酒を飲むということが肝要であろう。

第三章「飲酒の慢性影響」
アルコールは急に飲むだけでも危険だが、もう一つ慢性的な影響にある。次章で述べるアルコール依存症もその例の一つである。
それだけではなく脂肪肝と言った内臓に関する病気にもなるという。

第四章「アルコール依存症」
慢性影響の最たるものと言うと「アルコール依存症」である。特に「酒」をストレス解消やいやなことから逃れるためにすがる人が多い。
このアルコール依存症は厄介で、脳的にも精神的にも多大な悪影響を及ぼすだけではなく、精神的なカウンセリングも必要なことからほぼ一生付き合わなくてはいけない病気であるという。

第五章「子ども、家族を苦しめる親の飲酒」
親の飲酒が子どもに悪影響を及ぼすというのは考えにくいが、アルコール依存症によるDVというのもあり、そのことによって家族間でギスギスとした空気を作る。純粋無垢な子供はそれに強く影響を及ぼし、「アダルト・チルドレン」というのを作ってしまうという結果になる。

第六章「アルコールがもたらすその他の問題」
妊婦は酒を飲んではいけないとされている。それはなぜなのか。それは胎児にあるという。胎児性アルコール症候群(FAS)のがあり、子供の顔の輪郭づくりから、行動障害にかかることがあるという。

第七章「子どもの飲酒実態」
「お酒は20歳になってから」という張り紙やCMを誰もが1度は見たことがあるだろう。
しかし酒を飲む子どもたちの実態について調査結果について考察を行っている。ひとりで飲んだり、友達と飲むというのは少ないもののいるというのには変わりはない。それ以上に多かったのが冠婚葬祭のとき、未成年でも「無礼講」というのが働くのだろうか。

第八章「アルコール乱用の子どもたち」
未成年のアルコール乱用の現実を実例をもとに紹介をしている。特に不登校や引きこもり、薬物乱用と同じような扱いのようにしているように思える。確かに「未成年の飲酒」というのは法律で禁止されており、科学的にも個人差はあるが悪影響を及ぼすというのは実証されているが、本章を見る限りでは「飲酒=悪」という風潮を作りだしてはいないのだろうかといういささかの疑問を生じる。

第九章「なぜ子どもの飲酒は駄目なのか」
脳や精神的な観点から悪影響を及ぼしやすいとされている未成年の飲酒。その大きな理由の一つに挙げられるのが「成長期」というものにある。脳科学的にも内臓と言った肉体的にも発達檀家にある未成年が毒性のあるアルコールを摂取するというのは肝臓は無論のこと、知能に至っても成長の妨げになるという。

第十章「子どもの飲酒をなくそう」
いきなり「酒を飲みすぎる日本人」というのが印象を受けた。しかし日本人はそんなに飲み過ぎているのだろうか。日本や焼酎などの酒の文化というのは昔からあるのに、である。日本人の飲酒量は増加しているとはいえ欧米諸国には及ばない。ましてや他国と比べるのは場違いなのではないかと考える。

本書は飲酒の危険性について警鐘を鳴らしているが、「飲酒=悪」という印象がぬぐえない一冊であった。

酒は度が過ぎると「百害あって一利なし」であるが、自分の身体に合わせて上手に付き合い、料理とともに楽しく飲むことこそ「酒」を愉しむことができる。