奏でる声

「声」というと通常は「奏でる」と言わず「うたう(「歌う」「唄う」「謡う」「詠う」など様々な意味合いを持つ)」

本書の舞台はオーストラリアの北西部、ちょっといけばオーストラリア最大の砂漠地帯(ゴビ砂漠?)がある。そのためか本書では「砂漠」と言う下りが数多く存在する。オーストラリアというと私たちが認知しているところではエアーズロックを除けばシドニーやメルボルンと言った東海岸の部分が多く、次にパースがある南西部が認知されている。しかし北西部はそれほど目立った都市はなく、多くても3〜4万人ほどの小さな町があるくらいである。しかし本書を読んでいくうちに生活の中になにやら「精霊」もでてきている。その精霊が本書の主人公であるビリーという少年と出会うことによって物語は始まる。

物語を観る限りビリーは感情的でありながらも、数多くの悩みを抱えているような描写が多かったように思える。

本書のタイトル「奏でる声」だが直接的に「歌う」や「奏でる」といった表現がないものの、それに近い、むしろ暗に表現しているところが所々見受けられ、あたかも読んでいながら歌っている声が聞こえるようであった。

少年が精霊、もしくはアボリジニーが歌っている声、または風の声に惹かれる姿というのが描かれながらも、ストーリーにのめり込んでしまう不思議さを感じてしまう。1度の読了ではこのことはなかなか受け取ることはできない。分厚い一冊ではあるが2・3回繰り返して読むことをお勧めする。そうでもしないと本書で感じ取られる声や少年の心の内を感じ取ることが難しいからである。