若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!?

いよいよ8月30日は衆議院総選挙の投票日である。すでに選挙候補者の顔を覚え、誰に投票するのか絞り込みを行っている人もいれば、まだ決まっていない人もいる、もうすでに「期日前投票」を行うことで一票を投じた人もいる。

メディアの調査によると民主党が圧倒的だという報道があるようだが、その真実は投票後の開票結果が公示されないと分からない。あくまで調査であり、最終的に政権交代が起こるか、起こらないかというのは自らの一票に委ねられている。とりわけ今回の選挙は「衆議院」の選挙である。法案の多くは衆議院から可決され、たとえ参議院で否決されたとしても憲法において「衆議院の優越」が担保されている限り、国政の中で最も重要な選挙と言うのが良くわかる。
しかし、これに限らず若年層の投票率は芳しくなく、ほぼ毎回の如く5割を切っている。若年層はなぜ投票しないのかという考察もしなければならないのだが、それ以上に私たちの世代こそ、これから労働の中核を担う世代であることを自覚し、政治にも経済にも関心を持つ必要がある。本書はそのテキストとして政治リテラシーと投票について書かれている。

第1章「若者は政治によって損をしている!?」
近年「少子化」により若者の人口は減少している。それだけではなく自らの生活や楽しみに没頭しているかのように政治への関心と言うのが薄れてしまっている現実がある。
政治に関心を持つ余裕がないのか、それともそもそも政治に興味がないのか。
ただ、これだけ言えるのは日本の借金は現在約850兆円ある。そのつけが回ってくるのはまさに私たち若者の世代である。それが身にしみてわかる様になるが、それはいつの日になるのだろうか。

第2章「主役は、「有権者」のはずだけど……」
日本は議会制民主主義国家である。この議会の議員を決めるのは私たち国民の中の「有権者」である。その有権者は政治家を見て投票を行うが、では政治家の「どこ」を見て投票を行うのかという所がネックとなる。
本当であれば政党のマニフェストから、各候補者の生い立ちから実績、何をしてきたのかという所まで総合的に判断をして投票を行うのがベストなのだが、いかんせん有権者の多くは仕事や家事に時間が割かれており、どうしても政治に関心を向くのには限られた時間しか残っていないというのが実情としてある。そのため候補者の顔か政党、あるいはくじで決めるというような要領で投票する。政治リテラシーの無い人の投票の仕方であるが、リテラシーのある人でもそれほど変わりがないという。
私としてはあまり意見の合わない所(「人物本位で投票しない」など)はあるが、ベターな投票としてもう一つ挙げるとするならば、あえて自分の意見の合わない人を投票するというのも、一つの手段かもしれない。

第3章「実は「国会議員」の力は弱い!?」
国会議員を選んでも、派閥争いや失言によるあげ足取りなど弱い立場にいるといってもいいのかもしれない。
その理由の一つとして国会議員単位(公設秘書も含めて)で法律を作る力と言うのが弱く、法律に関する知識や見解について官僚に頼るしかないという現状がある。
また総理大臣の交代が頻繁に行われており、国際的な舞台では「Who are you?」と言われることが何度かあるという。

第4章「「特別利益団体」を知らずして政治は見えない」
政治は国会で起きているばかりではない。実は見えないところでも起きているのだという。
「特別利益団体」、いわゆる官僚の天下り団体、もしくは「圧力団体」と言われているところである。ちなみに政治に深く関与しているだけに非常に厄介な存在である。
こういった「圧力団体」の存在は日本に限ったことではなく、アメリカでも先のブッシュ政権の背後にはキリスト教右派、戦争民間会社などがいたほどである。

第5章「「官僚組織」の「官僚組織」による「官僚組織」のための政治?」
日本は「官僚政治」とも呼べるほどであるといわれている。TVでも連日のように官僚による腐敗が報道されているが、これは一向に治る気配がない。
しかし官僚も政府が発行している統計資料「白書」の調査資料の編纂、それに関連する専門性と言う所ではエキスパートの役割を担っているのは事実である。
官僚を徹底的に根絶をしたときには果たして、政治や経済など日本そのものにかかわる情報をだれがとってくるのか、誰が編纂するのかというのが課題になる。おそらくだれも名乗りを上げないだろう。
そういった役割を担ってくれるのが官僚である。従って官僚を根絶するのは不可能であるが、特殊な年功序列制度と言うようなものの改革も難しい、著者は官僚を「必要悪」と定義しているが、まさにその通りだと思う。

第6章「政治を変えるのは、あなた!」
こういった日本だから政治そのものを変えても無駄なのかと言うとそうではない。今回の総選挙は政権交代の可能性が非常に高く、本当の意味でどの政党を選ぶのかというのが問われる。ひいては日本国民の「政治リテラシー」が最も問われる選挙と言える。
「経済は一流、政治は二流、国民は三流」という言葉を死語にさせる絶好のチャンスである。

これからの政治のために自らが責任を持って一票を投じる義務がある。それを若者のみならず有権者は忘れてはならない。
本書はまさに「これから投票に行くための政治入門書」という位置付けと言える。候補者や政党を決める前に、そもそも政治とは何なのかということは誰しも知る必要のあることである。