豚インフルエンザの真実―人間とパンデミックの果てなき戦い

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豚インフルエンザの真実―人間とパンデミックの果てなき戦い (幻冬舎新書) 豚インフルエンザの真実―人間とパンデミックの果てなき戦い (幻冬舎新書)
外岡 立人

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ほんの少し前からまた「新型インフルエンザ(H1N1型)」と言うのが話題にのぼり始め、ついに死者も出てくるほどの騒ぎとなった。ちょうど春から初夏にかけて「新型インフルエンザ」の「パンデミック」と言うので騒がれたばかりである。
私の会社でも近所のスーパーマーケットでも消毒用のアルコールが置かれるようになり、手洗いとうがいをするように言明されている。
本書は「パンデミック」研究の権威である外岡立人氏が春先に起こった「パンデミック」騒動について冷静な観点で分析を行っている。

第一章「ドキュメント。豚インフルエンザ来襲」
パンデミックの予兆があったという報道があったのは2006年に遡る。それ以降はその可能性と言うのはだんだん薄れてきたと言われているが、「感染列島」と言う映画が公開される前後にはパンデミックにかかわる本と言うのが続々と出たところから、メディアは「パンデミック」という言葉の嵐をおこした。
その騒がれたパンデミックが2009年4月、現実のものとなってしまった。4月22日にアメリカの「ワシントンポスト」紙によると、「新型豚インフルエンザ」の予兆があるという報道からであった。日本でも4月24日にそれについて報じられた。感染ルートはカリフォルニアから南にわたって、メキシコにまで及んだ。そう、パンデミックの震源地とされたメキシコからである。
ところがこのメキシコの報道がパンデミック騒動を混乱させた要因として挙げられており、感染者数や死者数が二転三転するということになった。
日本ではゴールデンウィーク明け前の5月9日に感染者が確認された。
妙な話だが、この時の「新型インフルエンザ」の感染は若年層がほとんどで、50代や60代の感染がゼロであるということである。

第二章「世界史を変えたパンデミック」
そもそも「パンデミック」と言うのはどのような意味で、語源は何なのかということについて調べる必要がある。パンデミックと言うのはもともと「pandemia(パンデミア:汎発流行、世界流行)」からきており、世界的に伝染病が流行しているということを表わす単語である。WHOが定める警戒水準の「フェーズ6」がこの「パンデミック」に相当する。
しかし「パンデミック」と言うのはインフルエンザに限ったものではなく、スペイン風邪もこのパンデミックに当たる。
歴史的なパンデミックで古いものを挙げるとするならば、中世ヨーロッパでは14世紀に「ペスト(黒死病)」がパンデミックとして世界中で感染し、全人口の3割が命を落とした。
さらに後を辿ると、「天然痘」が18世紀の前半に流行したとされている。これはイギリスの医学者エドワード・ジェンナーによってワクチンが開発され、急速に流行が衰えた。天然痘に限れば古代にも流行し、300万人もの命を落としたという記録があるほどである。
スペイン風邪も当然、「パンデミック」とされており、4000万人以上の人が命を落とした。
今回の騒動より前とすると、強いて言うならば「SARS」がそれに当たるのではないだろうか。

第三章「鳥インフルエンザの不気味な予兆」
今回は「豚インフルエンザ」のことであるが、もっと恐ろしいインフルエンザが存在する。それが以前話題となった「鳥インフルエンザ(H5N1)」である。この「鳥インフルエンザ」もパンデミックの可能性があると指摘されており、現在のところ人から人への感染は確認されていないものの、いつこのウィルスが突然変異して人から人への感染がされてもおかしくないとされている。
しかし日本での「パンデミック」についての報道はほとんど「豚インフルエンザ」であり、「鳥インフルエンザ」については今年だと2月末に起こった一例のみである。
日本では感染はあまりないとされているが、隣国・中国では今年に入って鳥インフルエンザの感染者が8人にのぼり、そのうち5人が死亡している。このことからでも非常に毒性が強いというのが窺える。

第四章「過剰にして穴だらけの日本の対応」
春にインフルエンザが流行したとき、政府と地方公共団体の対応の仕方で対立があった。厚生省と大阪府である。これについては散々報道されているためあえて、ここでは書くことはしないが、策を講じるということに関して積極的だったか、後ろ脚だったのかというのを浮き彫りとさせた。それだけではなく、政府はこのウィルスについてどのようなものであったのかという具体的な説明がされていなかったと著者は批判をしている。あれだけ騒いでいて肝心な情報を流していないという政府、メディアに責任があるという。

最後のあとがきで非常に重要なことが描かれているので少し抜粋する。

「日本では風邪やインフルエンザ予防に、“うがい”や“マスク”着用が習慣的に行われる。
欧米ではインフルエンザなどの感染症予防に、“うがい”という行為がない。単に習慣がないというよりも、医学的根拠がないためである。欧米の医学書には“うがい”は予防法としては一切記載されていない。
また感染症にかかっていない人が“マスク”を着用する習慣もない。(pp.177-178より)」

これは非常に重要である。そもそもインフルエンザは経口感染ではなく、服や物に触れることによって感染する「付着感染」である。インフルエンザの予防法として最たるものは「手洗い」であり、薬用せっけんの手洗いや手洗い後のアルコールによる消毒というのが効果的とされている。
またマスクについても感染者がくしゃみなどによるウィルスの飛沫を防ぐということであれば役に立つが、未感染者がマスクを着用してもほとんど効果がない。インフルエンザは「経口感染」ではないからである。
インフルエンザは「新型」ではないのだが、私も昨年末にかかったことがある(A型で冬にかかるとされる典型的なやつに感染しました)。インフルエンザは正しく予防すれば未然に防ぐことができる。その方法を正しく身につけ実行できれば、インフルエンザの恐怖は和らげられる。

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