投票行動研究のフロンティア

昨日衆議院総選挙が行われ、結果は言うまでもなく民主党の大勝で政権交代が行われることとなった。いよいよ民主党政権が始まるのだが、どのような政策を持ちだして、どのような政治を運営していくのかというのが期待とともに不安と言うのがある。どちらにせよ初めての政権であることに間違いはない。

さて、本書は「投票行動」に関する一冊であるが、投票行動というと政治学の観点で考察されることが多いのだが、本書は経済学など、様々な学問の観点から考察を行っている一冊である。

第一部「社会学的アプローチ」
社会学的観点から投票行動について考察を行っている。投票行動というと政治学的要素が強いのだが、政治的な事によって社会が動くとなると決して関連性がないとは言えない。
ここでは男女の投票行動の差や階級における投票行動の差について考察を行っている。
日本は戦前、女性の選挙権というのは認められていなかった。もう少し昔になると、税の納付額によって選挙権が認められた時代があったことを考えると、この考察は日本においても適用できる、と言うよりも興味深い考察になると私は思う。

第二部「社会心理学的アプローチ」
ここでは党派性や情報収集など有権者自身の心理において投票行動がどのように変化するのかという考察を行っている。
特に党派性は自らの党のイデオロギーに共感しているため、どのような状態にあろうともそのとうに投票する。簡単にいえばその党の党員や党によるしがらみのある団体や企業に属している人がこれに当たる。どれも属していなければ、俗に言う「無党派層」という括りに属される。
政治的情報の授受方法や内容によっても投票行動が大きくわかる。TVなどのメディアや最近ではYouTubeやニコニコ動画などの動画共有サイトにおいても政治的な情報が流れるようになった。また期日前投票が自由に行われるようになったことによって、投票もより自分の選択ができるようになり、情報によって大きく左右されるようにもなった。

第三部「経済学的アプローチ」
経済学的に投票行動はどのように動くのだろうか。おそらく福祉や減税、と言った経済政策の左右によって株価が上下したり、自らの生活と照らし会わせて投票を行うと言う人もいる。ここでは経済学的観点から考察を行っているため、経済学に関しての知識がなければ少し取っつきにくい所もあるが、生活と照らし会わせる有権者が多いことを考えると感化できない論題である。

第四部「新たな展開」
現在日本における選挙制度は、衆議院は「小選挙区・比例代表並立制」を採用しており、参議院は各都道府県の選挙区と、全国統一の比例代表制を採用している。
本性の冒頭で韓国の選挙制度について大統領が苦言を呈しているが、これは日本の「55年体制」の時代でも似ていることが起こっている。「一票の格差」である。
これについては衆議院では「55年体制」が崩壊されたときに改革されたが、これが完全に解決されたのかについては定かではない。
投票行動は様々な学問から影響を及ぼされているというのがよくわかった一冊であった。考察を行ってみれば様々なところで影響を及ぼされるのは理解できるが、私たちはそのことを意識しているのかというと必ずしもそうとは限らないと言うことは付け加えておかなくてはならない。