会社の数字を読み解くルール

明日香出版社様より献本御礼。
会社にいると業界を問わず「数字」と言うのがつきものである。たとえ数字とは無縁の職業だとしても「財務諸表」のように数字でなければ表現できないものと言うのは必ずある。すなわち「会計」であるが、この「会計」は結構複雑だと思う人もおり、特に数字が苦手な人については頭の痛いものであろう。本書は財務諸表など、俗に言う「決算書」をどのようにして読み解けばいいのかというルールを提唱している一冊である。

第1章「会社の数字=会計はこんなに役立つ」
「論理」や「証拠」といったものとして有力な材料として挙げられるのが「数字」である。数字を観ることによってどれほど進んだのか、どれほど伸びたのか、あるいは損逆というのが一目で理解できる。また分析の方法によっては傾向を知るということもできるため、数字ほど形の無いものを観るために便利なツールはないとつくづく思う。

第2章「会社の数字の基本を知ろう」
会社は財務諸表などを作る「会計」によって損益や財務状況を図ることができる。むしろそれを行わなければ会社のバロメーターと言うのが分からないので必要不可欠と言える。ここでは財務諸表を観るための「基礎の基礎」と言うべきところについて書かれている。

第3章「会社の数字の成り立ちを知ろう」
決算は大概、「英米式」という形式にて取り上げられており、一つ一つ「仕訳」の積み重ねによってお金の流れを把握させ、財務諸表に反映させる。
ここで「財務諸表」についてちょっと説明した方がいいだろう。
「財務諸表」は本書では「決算書」と呼ばれるものであり、主に「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュ・フロー計算書」などが含まれる。他にも細々とした票が含まれており、特に株式会社にとっては「株主総会」を行う上で重要な資料となり、また企業の財務状況や業績を観る者として非常に重要な役割を担っているものである。

第4章「30秒でつかめる決算書」
決算書とはいっても、先ほど定義したように何種類もあり、さらに勘定科目も会社によって差はあるものの細かく区切られていることが多い。会計の素人が見たら「何だこれは」と言うようかもしれないが、ここではどのように見たらいいのかというのをピンポイントで教えてくれる。

第5章「利益とお金の流れを理解する」
「利益」を見る、「お金の流れ」を見る財務諸表はそれぞれ違う。簡単に言うと「利益」は損益計算書、「お金の流れ」は「キャッシュ・フロー計算書」を見る。昨年か一昨年話題となった「黒字倒産」がなぜ起こるのかというのは財務諸表を見たら一発でわかる。それを知らなければ「利益が出ているのになんで?」という疑問だけで終わってしまう。なぜ黒字倒産となってしまうのかと言うと「売掛金」と言うのが大きなカギである。これ以上のことは財務諸表を見た方が納得いくだろう。

第6章「他人に差をつける財務分析力を持つ」
財務分析をするといっても「流動比率」や「自己資本比率」を求めるような計算めいたことは本書にはほとんど書かれていない。
むしろ勘定科目を見ることによって何が理解できるのかということについて書かれている。

第7章「会計力をビジネスの武器にしよう」
会計力はビジネスにとって大きな武器になると本章では言っている。どのような職業でもお金が動くものであり、それを適正に測ることによって会社の状態と言うのがはっきりと理解できる。会社の方向性や部課の目標を立てる上、もしくは仕事上の目標を立てる上で大事なものとなる。本章の最後には「内部統制」も書かれているが、むしろ次章に持ってきた方がいいだろう。

第8章「21世紀の会計を見てみよう」
会計の起源は今から1000年も前に遡るという。イギリスでは穀物の算出をイタリアでは貿易を行うために会計を行ったという記録があるという。それからというもの会計は形式など様々な点で変化を遂げ、現在でも法改正などによって大なり小なり絶えず変化をしている。
最近大きな変化となったのは「内部統制」ではなかろうか。内部統制については少し話が長くなってしまうのでwikipediaなどのツールを用いて調べた方がいいかもしれない。

第9章「あなたと会社の会計力を上げるには」
会計士としてどうあるべきか、そうではなくても会計を行っていくうえで大切なことについて書かれている。

会計はビジネスを行っていくうえで非常に大事な「ツール」である。ただし、鍵カッコでつけたように、会計はあくまでツールであり、それがすべてではない。数字ばかりに気を取られ過ぎてしまい、「人間性」というものをないがしろにしてしまい、やがて鬱になりやすい企業に陥る、俗に言う「ブラック企業」となり下がってしまう企業も少なくない。会社で言う数字はあくまでバロメーターでしかなく、本業をないがしろにしてはいけない。会計という数字を教えているが、それにのめり込むことがないようにあえて「あとがき」で喝を入れているという所が本書の魅力の一つと言える。