だから、新書を読みなさい

株式会社オトバンク 上田渉様より献本御礼。
私が書評を始めたのは2007年4月である。前身の「蔵前トラック」の時からである。最初は小説や単行本などを取り上げていたが、いつしか新書ばかり取り上げるようになった。深い理由はないのだが、購入するにも荷物かかさばるばかりではなく、購入するにも高価なためである。その点新書であれば差はあるものの大体700円で収まりながらもありとあらゆる分野を網羅しているため、書評していくうちに様々なことを学ぶことができるので一石二鳥だと思い、新書中心になった。この「蔵前トラックⅡ」も行こう当初は新書ばかりであった。そのためか私の書評と新書は切っても切れないものである。

本書は「情報は1冊のノートにまとめなさい」の著者である奥野宣之氏が新書を読むにあたってのインプット法・アウトプット法についてを伝授した一冊である。

序章「ビジネスパーソンのための新書活用法」
新書の良さはページ数がそれほど多くなく、持ち運びやすく、廉価で、それでいながら分野の幅が広く、ほぼ全範囲の学問に及ぶ。ただしデメリットもあり、「広く浅く」の如く、一つ一つの学問に対して、あまり突っ込んだものがないというのが特徴である。
裾幅の広い新書をビジネスにおいてどのように使えばいいのかというのが本書の狙いであるが、主にテーマを絞りながら三冊まとめ買い、同時読みを行い、「逆張り」を行うということを繰り返すという。
これを「新書ザッピング術」と言うが、これは一体何なのかというのを次章以降追ってみよう。

第1章「だから、新書を読みなさい」
序章のところで「逆張り」という言葉が出たが、一体どういう意味なのかと疑るだろう。簡単に言えば、誰も読まないものを読む、誰も知らないことを知るというのが「逆張り」であるという。
さて本章の話に移る。
新書の良さは最初の部分と序章で書いたが、新書とはいっても「岩波」「文春」「集英社」「ベスト」「光文社」…と枚挙に暇がなく、毎月約80冊もの新刊が出る。内容もピンからキリまで存在しており、サブカルチャーの要素の強いものもあれば、中公新書のように学術的なお堅いものまで存在する。本書のようにビジネス書のスタンスを持つ新書も存在するため、あらゆるジャンルに精通しようと思えばまず新書がもってこいともいえる。ただし、新書も単行本と例外なく、駄本も存在する。その見分け方も新書を選ぶうえでの課題の一つとなってくる。

第2章「奥野式「新書ザッピング術」のすすめ」
いよいよザッピング術についてである。自分自身の周りで起こっているものや、自分自身の問題について書き出し、それを解決するためにはどのような本を読むべきかというのを親書リストを作り、その中から3冊を選び同時に買う。
しかし、選ぶ3冊にも1冊1冊、どのような本なのかという基準も設けてあるため、「選り好み」というわけではない。
選び方を含め全部で14のルールによって構成されており、一つの課題ごとに3冊の新書を相対・絶対的にメモを取り、それぞれの観点について新書ノートにまとめることで、一つのテーマにより様々な観点を見いだすことができる。
3冊なので約2100円で多面的に物事をとらえることができることを考えると、新書ほどおいしいツールはないといえる。

第3章「新書を制覇する17の技」
新書を選ぶといっても過去数十年にわたって刊行しているものもあり数千冊にも及ぶ。その中から自分の求めるテーマにあった本を探すとなると、選ぶだけでも時間をとられてしまう。しかし現在はウェブが進化しており、ウェブによる検索を利用することによって自分の求める新書を選ぶことが容易になってきた。さらに書評もウェブや活版問わず数多く存在しており、選ぶヒントとなるツールは幅広い。

私も書評を通じてかず多くの新書を読んだクチなので新書の可能性はいやと言うほど理解している。それだけに新書を使ったり、読んだりと様々なことができる。豊富にある新書を効率的に使い倒す、ビジネスのために使い倒すということを考えると本書のような方法もまた然りである。