すき焼き通

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すき焼き通 (平凡社新書) すき焼き通 (平凡社新書)
向笠 千恵子

平凡社  2008-10
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すき焼き」と言うと「ごちそう」の逸品として挙げられており、家族や仲間たちと一緒に語らいながら舌鼓をする料理である。このすき焼きの歴史は文明開化からで「牛鍋」ができたころから遡る。本書はめくるめくすき焼きの歴史と牛肉の違いによるすき焼きの楽しみ方、個性派のすき焼き、京都と東京のすき焼きの違いについてすき焼きのオンパレードと言っても良い一冊である。

第一章「すき焼きは、ねぎを味わうごちそう」
章題からして思わず目を疑うのだが、よくよく考えてみるとまさにその通りと言える。
すき焼きと言うと、主役は牛肉と思いがちであるが、最もねぎの柔らかみと甘みを嗜むのもすき焼きの魅力の一つである。かの陶芸家であり美食家であった北大路魯山人は初めて焼き物の修行にいったところである「箐華(せいか)窯」でのエピソードについて書かれている。

第二章「鍋から考えるすき焼きのごちそう度」
すき焼きは言うまでもなく「鍋料理」の類に入るのだが、元々すき焼きは漢字に直すと「鋤焼」と書く。シャベルの一種であるため、そこがとても浅く、鳥類や魚を食すことが江戸時代後期の文化といてあった。当時は仏教の影響が強く、牛肉などは出回ることは全くなかった(江戸幕府十一代将軍徳川家斉が牛から作られる「白牛酪(はくぎゅうらく。今でいうチーズのようなもの)」を好んでいたという逸話があるだけである)。
ここではすき焼きのもう一つの語源となった魚介類を「へか」と言う鍋で煮て食べる「へか焼き」などが紹介されている。

第三章「浅草の牛鍋は、文明開化の味がする」
「散切り頭を 叩いてみれば 文明開化の 音がする」
日本でもっとも有名な都都逸の一つと言える文明開化を象徴した都都逸である。これを本書に倣ってみると
「牛鍋一つと 舌鼓して 文明開化の 味を食べ」
…無理があったか。
すき焼きは江戸時代からあったのだが、今ではなじみ深い牛肉が使われたのは幕末になってからである。
現在でもこの「牛鍋」は食べられる所はあり、浅草の「米久」と言う店が有名であるという。

第四章「元祖「牛肉食い」福澤諭吉と元祖牛鍋屋」
福澤諭吉は学問において多大なる功績を上げたが、その一方で「福翁自伝」でも記述していたように牛鍋をこよなく好んでいたほどである。特に慶應義塾の塾生たちとともに食していたほどであるという。

第五章「日本三大ブランド牛――近江牛、神戸牛(但馬牛)、松坂牛」
ここからは牛肉の歴史と言うよりもブランド牛、名牛についての紹介に移る。上記の牛肉は今や100g数千円にものぼるほどのブランド牛である。とりわけ近江牛は明治以降の早い時期から高級牛肉としてもてはやされていたという。

第六章「松坂牛の名を広めた天下の名店」
今や世界的に有名なブランド牛の一つとされた松坂牛であるが、一躍世に広めたのは兵庫にあるとある名店である。「和田金」と言う店であるのだが、本章ではその店の魅力を余すところなく書かれてる。松坂牛とはいえこれほどまでふんだんに書かれていると本章を読んだだけでも兵庫に行きたくなるくらいであった。

第七章「知られざる名牛――米沢牛、前沢牛、仙台牛、隠岐牛、壱岐牛、見島牛」
「ブランド牛」は様々な種類があるが、第五章で紹介された「ブランド牛」はいずれも関西(特に兵庫)である。最初に牛肉を食した説の一つに神戸が挙げられているためだろうか。
本章では東北の米沢牛・前沢牛・仙台牛、島牛と呼ばれる隠岐牛・壱岐牛・見島牛が紹介されている。

第八章「彦根から近江牛すき焼きを取り寄せる」
近江牛が全国に知れ渡ったルーツには近江商人によるものがあると言われているがその真相は定かではない。とはいえ近江牛は三大ブランド牛の中でも燦然としている。
近江牛が最もいいというよりも、著者が最も重いれの強いブランド牛であることが窺える。

第九章「常識をくつがえす個性派すき焼き」
「個性的なすき焼き」とは一体何なのだろうと目次を見ると思わず興味津々となった所であった。
この「個性的」と呼ばれている所は野菜であるが、エリンギや玉ねぎ、大根など確かに個性的であり、面白い。

第十章「京都と東京――すき焼き名店食べ歩き」
すき焼きは関東と関西で調理法が異なる。関東はあらかじめ割下を入れて肉を煮込むが、関西ではまず牛肉を焼きそこに砂糖や割り下で味付けをする。
また名店の味もそれぞれ違いがあり、本章ではそれを愉しめる。

第十一章「浅草「ちんや」が語るすき焼きないしょ話」
関東を代表するすき焼き点と言えば「ちんや」であるが、江戸時代から続く老舗である。江戸時代は前述の通り牛肉を食すことが禁じられていたため何をやっていたのかと言うと今でいう「動物病院」や「ペットショップ」であり、幕府御用達であったという。現在のすき焼き点になったのは明治半ばの1903年。それでも歴史は長いことが窺える。

私はさしずめ一人暮らしのためすき焼きは最近食べたことはないのだが、実家に帰ると必ずすき焼きが出る。地方の違いであるが、私の所のすき焼きは「豚肉」を使っている。調べてみたら北海道では一般的に広まっていたことに驚いた。
すき焼きも地方によって違いがあり、それを楽しみにもできる。「食」は奥が深いとつくづく思う。

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