元国税が教える会社を救う!5つの社長力―中小企業のためのウラ経営書

先日のセミナーで主催・講師をされた久保氏の一冊である。
久保氏と言えば元国税庁で働いたというよりも数多くのプロジェクトを成し遂げた。その実績を引っ下げて昨年独立を果たし、今ではコンサルタント事業を行う傍ら、年間50回ものセミナーで講演を行っている。本書は経営コンサルタントで数多くの企業を観てきており、かつ自らも社長業を行っている経験を駆使して、社長として会社を救う力が五つあるという。本書はその五つの力を一つずつ紹介している。

一章「直感力」
新しい商品や企画、考え方は論理の元で考えられるものもあるが、既存のものなどからふと考えるとでてくるものである。「ブレーンストーミング」などをもちいた会議を採用している所もあり「アイデア」を出す考え方、方法は広まりつつある。しかし中には、「アイデア会議」と称して突発的に行い、他人の出したアイデアをだめ出しして自分の考えを押しつけさせる。机上でウンウン考えさせる会議も存在するかもしれない。それと同じように社長も新しい企画、経営を行うために机上などで四苦八苦している。
しかし社長だからでこそ、直感を大事にすべきだと著者は主張する。それは「論理」からただしていくよりもふとひらめいた「直感」は、後に論理付けをすることができる。「思いつき」と勘違いする人がいるが論理に落とし込める違いがあることから直感は大事であるという。
また社長は「ワンマンで当たり前」はおそらく経営を知らない人にとっては毛嫌いしそうな言葉かもしれない。しかし、いざというときに船頭に立つ人が誰がなるべきかというときに皆の意見を聞いてばかりいて、「船頭多くして船山に登る」と言うことを避ける、もしくは社員たちに思い切ってプロジェクトを築けという親分肌を持つと言うところから「ワンマン」は必要なのかもしれない。

二章「モチベート力」
社長にとっても、社員にとっても必要なものであるが、なかなか身に付かない力と言うのがこれである。
さて社長は社員に対してどのようにやる気を出させるにはどうしたらいいのかと言うところについて書かれている。
有能な社員がどんどんやめていく原因はいくつかあるのだが、その中でもモチベーションの観点でやめていく人も多い。社員にモチベーションを高めさせることが必要であるが、しかし昔のように「給料」を上げることではモチベーションを上げることができなくなった(今であれば、若干であるが上がるかもしれないが)。それ以上に「働く意味」「働く信条」という、心的な意味で働く人が多くなった。それに応じるかのごとく社長は理念と働く意味を諭す、共感させる力を持つ時代に入っていったのかもしれない。おそらく社長力の中でこれからもっとも重要視されるのではないかと考える。働く意味を見出し、お金ではない、新年で働ける、そして若者たちのモチベーションを上げる力を持つ会社が強くなるだろうと私は考える。

三章「PDC力」
経営用語に「PDCAサイクル」と言うのがある。
「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(検証)」「Action(改善)」の頭の大文字をとった用語であり、経営の場に限らず、ビジネスにおいて幅広く使われている。
しかし本章ではこの中から「A」を除いた「PDC」で使われている。「A」はすでに「C」の段階で検証が行われ、改善店を見出していることからいらないのだという。「P」の段階では数字も合わせて計画を立てるが、だいたいのめどをつける、簡単にいえば見切り発車できるところで計画をやめ、実行に移すことを著者は勧めている。というのはいくら綿密な計画を行ったとしても、たとえそれが目標に到達したとしても、思い通りのプロセスにならないからである。プロセスの修正は「C」の段階でできるのだから「P」をいかに時間をかけないか、と言う観点でたててみるといいかもしれない。
そして「Check」も「A」が無い分大事になってくる。数字やプロセスを分解し、改善点を見出し、次の計画を立てていく。その中で、どこまで細かく分解できるのかが至上命題となる。

四章「現金力」
ビジネスたるもの現金はないと話にならない。借金や売掛金も程々でなければ、自ら不渡りを出したり、相手方の不渡りなどによる倒産もある。
ある噺家は「借金はせなあかん」と言っていたがここはビジネスの世界。借金一つ間違えると命とりになりかねない。
ここでは「会計学」も兼ねたところである。数字嫌いの人もいるかもしれないが、数字嫌いでもある程度の会計の知識を砕いて説明されているのである程度の知識を得ることができる。そこから、会計入門など数字に強くなる本もでているので、会計の知識を身につけた方がいい。
本書は「最低限」知っておくべき所について書かれている。

五章「ストック力」
経営にもいろいろな種類の経営がある。ここでは大きく分けて「ストック型」と「フロー型」に分けて、「ストック型」の優位性について説明されている。
「ストック型」・・・長期的にノウハウやキャッシュを蓄積し、安定的な経営をする形態。簡単にいえば「仕組み化」と言うべきか。
「フロー型」・・・流動的でありながら短期的に増益がはかれる経営。簡単にいうと「一発屋」と言うところか。
創業100年以上続いている企業には前者のような「ストック」も存在しており、安定的な経営を果たすことができている(時折、フローに走る起業もある)。しかし起業の中には「一発屋」のように「フロー型」に走る会社があるが、その起業は大概、衰退とともに会社を畳むというところが多いのかもしれない。
「安定的」であるとすれば、蓄積をすることによって仕組みに落とし込むことが重要とされる。

会社を続けるためにどうしたらいいのか、社員が活気づかせるにはどうしたらいいのか、と言うのがめいっぱい詰まった一冊である。これから起業をしたい方、経営がうまくいっていない方にはおすすめの一冊である。手法を説明するばかりではなく、活を入れられたかのようにはっとするような一冊である。