風狂の空 平賀源内が愛した天才絵師

江戸時代の後期に非常に有名な画家が存在した。
彼の名は「小田野直武」と呼ばれた。彼は蘭学者であり、作家、発明家であった平賀源内から蘭画(オランダ流の絵画)学んだという。日本画にどっぷり漬かっていたが、オランダ独特の絵画を観て小田野は衝撃を受け、蘭画修行を行った。その後に有名な杉田玄白の「解体新書」の図の描画を任されたのも小田野である。順風満帆と思われた矢先、小田野は30年という非常に短い人生に幕を下ろした。死因については切腹や病死など諸説あり、真相は定かではない。

小田野の代表作もいくつかあり、実際に絵を観ることは比較的容易である。しかし小田野の生涯について迫ることは文献自体が多くなく、平賀源内からも探す必要があるため、なかなか難しい。

そこで本書では数少ない文献からフィクションの脚色をつけて小田野直武の生涯を描いている。文献がない分どのようにして平賀源内と出会い、蘭画の修行をしたのか、そして「解体新書」・杉田玄白の出逢いがこれほどまですっきりとしたストーリーとなっているように思えた。それ以上に解体新書以降、30歳でこの世を去るまで蘭画に対してどう向き合っていたのか、彼は30年の世の中をどのように見ていたのか、死ぬ半年前に平賀源内との別れとどのような心境だったのだろうか、史実は定かではないのだが、本書はあくまでフィクションとして提示している。

歴史という名の潮の中で何人もの偉人が風化させられている。小田野直武はその一人であったに違いない。