君を幸せにする会社

「経営学」は様々な様式や方法が存在しており、用法もたくさんある。また経営学の大学院である「ビジネススクール」と言うのがあり、それの卒業のあかしとして「MBA」が授与される。もっとも効率的に、かつ有益な経営をするためにとる人が多いが、経営に関して、会社に関してほんとうに「重要な」ものはその大学では教えてくれない。

本書はその「教えてくれない」ところについて書かれているが、それは会社員として、経営者として、社会人としてあるべき本質がそこにある。

第一章「苦悩」
本書の舞台はとあるリゾートホテル。その社長は赤字続きでいつ倒産をしてもおかしくない状況にあった。
昨今の社会状況からしても、第一章にある状況の会社は少なくない。前にも「失われた10年」と言うのがあるがそのときには大規模なリストラが横行し、路頭に迷う人たちも存在する。
経営に関しても、赤字続きで行き詰まり、目標を高く掲げて社員にプレッシャーをかけると言うことも少なくない。その理由も一つにあるのか、社員の士気が下がり、雰囲気が葬式のようになってしまう企業も少なくない。

第二章「気づき」
最初に「効率的」な経営というのが言われるが、それにとらわれすぎるとかえって良くない。さらに言うと接客はマニュアルがあるのだが、これにはごく当たり前のことしか書かれておらず、それ以上のことについては現場でしか教えてくれない。
企業は「利益」を出すことは至上命題であるがそれにとらわれすぎて、相手にとって「win-win」の関係になること、ひいては顧客にとって最高のもの+付加価値を提供することが大切であるが、とりわけこの「付加価値」が重要であり、見落としやすいところでもある。
社長は、経営学では学べない「何か」を気づき始めた。

第三章「変化の胎動」
気づきを得た社長は、様々な改革を行った。自分自身も、会社も、社員に対しても改革に乗り出した。しかし改革の中で社長は社員の不満や社長自身の葛藤によりもがき苦しみながら改革を進めていった。
変化には様々な犠牲や批判が生じる。それにさらされている。しかしそれにもがき苦しみながら改革を進めた。

第四章「本当に大切なこと」
がんばってきた甲斐があり、会社の経営状態が改善されたのだが、その矢先にホテル全体が火事となった。おそらくこのことが本書でもっとも言いたかったこと、経営や会社として、社会としてもっとも肝心なことが詰まっているようだった。

第五章「ビジネスにおける真理」
ビジネスにおいて、社会においてもっとも大切なもの、それは「感謝」の心である。競ったり、利益を上げたりせず、常にお客様に対して感謝の心を持つ。
ビジネスでは大事なことと言われているが、なかなかそれを実行に移せるところがない。それ以上に「効率化」「生産性の向上」などに駆逐されているように思えてならない。「感謝」をすること、そのことによって様々な連鎖が起こる。

本書は経営や会社に関する本であるが、社会人として、会社人として大切なことを教えられているような気がした。同時に今の日本企業に欠けているもの、現代社会への忘れ物がいっぱい詰まっているような感じだった。社会人のみならず、大学の経営学でこういったことを学べる機会があればいいなと考えもした。本書は経営は会社にとって忘れてしまったことを思い出させる一冊であった。