悪女の仕事術

「悪女」というと、日本の有名どころでは阿部定が挙げられ、海外でも様々な人がいる(例えば、中国で言うと「金瓶梅」の藩金蓮、韓国では文定皇后)。

皆さんは「悪女」と聞いて、どのようなものを想像するだろうか。「狡猾」「狡獪」「狷介」な知性と性格でもって相手を手込めにする計算高い女、という印象があると思うが、本書の言う「悪女」はそうではない。女性でありながら、いや「女性」であるからでこそ知性にあふれ、礼節をわきまえながら、凛と生きる姿を言っている。ギスギスとしている社会の中で「悪女」として仕事・プライベート双方を振る舞うことができるのか、「悪女学研究所」の主宰であるナオミちゃんベル氏こと藤田氏の仕事術を紹介している。

第1章「「いい人」という免罪符を捨てよう」
「いい人」というと響きがいいが、実際のところ「どうでも〜」や「いてもいなくても〜」と付け加えられる。さらに言うと「使い勝手の〜」と「自分にとって都合の〜」もある。
「いい人」はこう言った側面もある。
この「いい人」から脱出し、「悪女」となるためには、愛嬌や色気、ウィット感、エレガント、オーセンティックを持ちながらもチクリと刺すような棘をつくる。そして確固たる「自分」を持つことも大事とされる。
「悪女」としてもっとも印象的なのが「棘」を持つこと、その「棘」をつくるにも露骨ではなく気品を持ちながら持つというのが見事と思う。

第2章「素敵な「悪女」になる5つのステップ」
著者の悪女になったきっかけから始まる。著者はいわば「いい人」を振る舞い続け、数多くの辛酸を舐め続けた。その後先輩の助言から「考える」、そして「行動」をするとともに、「悪女」に開眼した。
さて、この「悪女」の根幹となっているのが、「考えること」と「戦略」にある。戦略を立てるために「考え」、そしてたてて、行動を起こすことにあるが、それ以前にやらなければならないことが「悪女」の意識を変えること。「いい人」をやめること、そして「敵を作ることを厭わない」ことにある。そして「戦略」をたてる為の「考える」ことにも「SWOT分析」などを行うことにより、思考を体系、もしくは図解化をする事も大事といえる。

第3章「努力最小、リターン最大の「悪女テクニック」」
最小の努力で最大のリターンを得ることができる。本田直之氏の「レバレッジ」の感がある。
さてそれを行うための46のステップを紹介している。いよいよ本書の根幹といえるテクニックがここにある。
ここでは印象に残ったものをいくつか挙げてみることとする。

・『恩買い作戦』
男性社会の中で男性のプライドや面子を保ちながらも「可愛げがある」として見方を手に入れるというものである。

・『御礼四回』
三国志に「三顧の礼」というのがあるがそれよりもう1回増えたのかと一見思ってしまった。しかし「三顧の礼」はお願いをすることであるに対し、時期に応じて4回御礼をすることにあるという。

ビジネスとして重要なことばかりでなく、女性の処世術、「まさに「悪女」!」とも呼べるようなテクニックまで満載である。

女性として男社会をどう歩くべきか、「悪女」になるべきかがここに詰まっている。もし、本書のようにできる人が増えたら、国の力を使わずとも、女性の地位向上は確証される。
ちなみに男性にとってもメリットがあり、ギスギスとした社会のなかでどのように「世渡り」をしたらよいのかのヒントもいくつかある。本書は「悪女」とあるのだが、女性にとっても、男性にとっても効果的な仕事術といっても過言ではない。