頭がよくなる思考法 天才の「考え方」をワザ化する

考え方と一括りにしても、方法はいろいろとある。また人それぞれ違うと見ると、おおよそ60億通りと言っても過言ではない。しかし、同じ考え方にとらわれてしまい、他人の考え方を否定し、力ずくで押し通すような人もいる。同じような考え方になるのには環境や人的な要因もあるわけだがどっちにしても「思考停止」に陥ってしまう状況であるに変わりはない。

本書はそういった「思考停止」からの脱却と考える力を変える、増幅させるにはどうしたらよいのかについて提唱している。

第1章「無意識の思考を全部「意識的」に切り替える」
みなさんはどのようにして「考える」のだろうか。一度様々なアイデアや解決策をどのようにして生み出していったか棚卸しをした方がよい。私の場合はノートに考えていることのアウトプットを行い、思考を「見える化」させる。そのことによって足りないもの、新しく出てくるものが見つかるということを行ってきた。
本章における「考え方」、もとい斎藤氏の考え方はゲーテやニーチェを読むときはその人になるように「入り込み」ながら考えるという。これは落語や歌舞伎などの「芸」によく似ている。先輩や師匠から技のみならず息づかいなどを「盗み」、それを真似することによって自分のものとする。考え方の技術を増やす、視点・支点を増やすのもそういったことの積み重ねによるものかもしれない。

第2章「発想のうまい人は「まてよ?」が必ずうまい」
発想がワンパターンであったり、平凡といわれると人格否定に通ずるものがあるのだろう。「アイデア」を出すのにはどうしたらよいのか、まず特定の「モノ」をそのものとみないこと。これは先入観から脱却をしていくことである。そこからそのものは代用できるのか、応用できるのか、枠にとらわれないで見てみることにより、思わぬ発想を生むことができる。

第3章「相手の立場に立てば「自分」が見えてくる」
自分を見つめ直すために「禅問答」であるが、それをやることによって自分を細部まで見つめ直すことができる。自分のやりたいことや、人間における「自分」を観る(「見る」ではない。広く観るという考えである)
また本章では「驚く」ことの効用や無知、俗流若者論の批判などについて書かれている。

第4章「「バルコニーに上がる」だけで知性は変わるのだ」
メジャーリーグで9年連続の200本安打を放ったイチローや日本球界で3度の打撃三冠王に輝いた中日監督の落合博満が、ボールを打てる秘訣、そしてヒットをする秘訣について「ボールをよく見る」や「ヒットを量産すること」といった単純なことしか言わない。「当たり前のこと」と思いがちであるが、彼らの言葉には当たり前な言葉の裏にある「重み」「実行力」といったものがある。
「考え方」にしても同じかもしれない。身の回りのことをメモをしながら「なぜ?」「どうして?」を考え続けることこそ考える力を増幅させる要素にもなる。
「当たり前」のことを「続ける」ことによって小さな塵が山となり、大きな力となっていくのである。

第5章「ノーをプラスに変える「生産的な対立法」」
「否定」という言葉はネガティブな要素が含まれており、頭ごなしに「否定」されてしまっては何者にもならない。しかし、「否定」をする事自体は決して悪いことではなく、新しい考え方に結びつくことができる。本章ではイチローがオールスターでのエピソードについて書かれている。超一流の選手が「私を否定して、思うところを言ってください」と言ってきたのである。今の日本では考えられないことかもしれないが、よけいなプライドを捨てて、謙虚に成長しようとする姿勢や考え方があるのではと感じた。「否定」されることによって新しく学べる要素があるのかもしれないという考えからきているのだろう。「否定」は必ずしもネガティブに扱われるものではない。

第6章「感情を「隔離」しながら正解を組み立てる」
弁証法についてである。よく討論番組では感情的に賛成や反対といったモノを観たりすると思うが、それでは単なる発言でしかなく、生産的なモノは生まれない(そもそも討論番組自体、一種の茶番のように思えてならないが)。
本章では弁証法を否定しながらも、こう言った方法があるというように抜け口をつくる方法で議論をする。それにより相手も否定せずにどのような方法がある、利点や欠点を知ることによって新たにつくるか改良を加えることを繰り返す。一人でもできるので実践する価値がある。

第7章「他人の頭を使って「自分の限界」を突破せよ」
自分自身の持っている考え方に限界がくるときがある。そのときには他人に教えを請うことや、見てみることを心がけると良い。

否定したり、考えたりするにも「継続」は大切である。思考にしても「水」の様なものであり、ワンパターンでしかなくなってしまうとそれが澱んでしまう。方法を変えることによって、考えは新しくなり、視点もどんどん増えていき、面白くなっていく。