グレート・スモーカー―歴史を変えた愛煙家たち

最近「禁煙」の風潮が高まっている。とりわけ神奈川県では受動喫煙防止条例が4月に施行され、それに倣い飲食店では全面禁煙を打ち出す店舗も出てきている。タバコは医学的に有害であると実証されているのは周知の通りであるが、禁煙の風潮を見ると、禁煙というよりもむしろ「嫌煙」の傾向があるように思えてならない。

本書はある種で時代を逆行しているような一冊であるが、タバコの歴史とともに、歴史上の人物がどのようにしてタバコと関わっていったのかについても知ることができるのでタバコを吸えない私でも楽しむことができる。

第一章「紙巻たばこを愛した人々」
現在ある「紙巻タバコ」が挙げられており、その中でも「両切り」「フィルター付」といったものがある。誕生したのが1869年、日本では明治時代の始まりだった。その時の紙巻タバコは「口つけタバコ」というものだった。これは紙巻タバコの吸い口の部分に紙筒を包んだだけのものといわれている。
「紙巻タバコ」は現在において最も出回っているタバコとされており、銘柄もマルボーロ、ラッキーストライク、マイルドセブンなど数多い。
紙巻タバコを愛した人も数多くとりわけ文豪である夏目漱石や芥川龍之介、北原白秋をはじめ、明治・大正の両天皇、毛沢東らが挙げられている。

第二章「葉巻を愛した人々」
葉巻というとリッチのような印象をもってしまう。葉巻をくわえた人物を見た人はあまりいないのだが、マンガやドラマといったところで見るとなぜかそう思えてしまう。
邪見はここまでにしておいて、葉巻の歴史は紙巻タバコよりも長く、大航海時代にはすでに存在したと言われているほどである。日本人にはあまり馴染みのないタバコであるが、イギリスやスペインなど歴史と縁の深い欧州では割と多い。
歴史上の人物で代表されるのは、英国首相を務めたウィンストン・チャーチルやアメリカ大統領であったジョン・F・ケネディも愛用していた。日本の首相でも吉田茂もその一人として挙げられており、本書では取り上げられていないがプロレスラーのジャイアント馬場も愛用していた(ただし、馬場はある盟友のがん告白により葉巻を止めたという)。

第三章「煙管を愛した人々」
日本で最も歴史の長い煙草と言えば「煙管」といっても過言ではない。史実からしても鎖国を行う前、江戸初期の頃にスペインやポルトガルから伝来された。鎖国が成立してからも「煙管」の文化は浸透し、落語でも煙草を吸うしぐさとして「煙管」が良く使われる。その縁もあってか煙管を愛した人物として本章では筆頭として五代目古今亭志ん生と八代目桂文楽を挙げている。

第四章「パイプを愛した人々」
パイプの歴史は葉巻と近く、1500年代と言われている。しかし発祥の地は欧州とはいえどイギリスに当たる。パイプというとマンガ・アニメではポパイを思い浮かべることだろう。歴史上でマッカーサーやゴッホ、架空の人物でシャーロック・ホームズが有名である。パイプを使う日本人はあまり多くはないのだが、評論家の竹村健一が有名である(ブログにもパイプをくわえている写真がある)。

タバコは大航海時代から約500年以上にわたって歴史を紡ぎ、その中で様々な人物が愛してきた。科学的に人体に有害であると実証されているとはいえ嗜好品であることは間違いない。タバコを吸うことのできない私でも煙草を吸えるという羨望はあり、格好よく思える。禁煙、もとい嫌煙の風潮が高まる中で本書が出ていることにより、どのような流れに代わっていくのか、あるいかかわらないのか見てみたいところである。