日本の動物法

「動物保護」「動物愛護」という動きが強まっている。しかしその一方でそれを謳いながら他国に攻撃を仕掛けるとんでもない輩がいる(別にドコとは言わないが)。

日本に限らず世界には動物に関する条約や法律が存在する。本書は動物法とは何なのか、動物法の歴史はどこから来たのだろうか、動物法は私たちに何をもたらしてくれるのか、そしてこれからの動物法とはいったいどうなるのかについて書かれた一冊である。

第Ⅰ部「動物法とはなにか」
日本における動物法の有名どころでは五代将軍綱吉の時代に「生類憐みの令」というのがあるが、これは法律ではなく将軍の命令によるものであった。
動物法が初めて体系化されたのは明治13年の時であり刑法の中で「牛馬殺害罪」「家畜殺害罪」が制定された時からである。もともとこれらが制定されたのは、以前からあった仏教における「殺生」を禁ずる掟があったのではないかと考えられる。また、戦後には「獣医師法」など動物のことに関してだけでも数多くの法律が制定された。
西欧では、19世紀にイギリスが作ったのがはじまりと言われており、国際的な条約として「ワシントン条約」が挙げられる。

第Ⅱ部「人と動物の関係からみた動物法」
ここでは具体的な法律というよりも、法律における人間と動物の位置はどうであるのかについて書かれている。
元々その議論が始まりだしたのは明治時代、第Ⅰ部で取り上げたように動物法が体系化されたときと同じとみている。それまでは動物は同じ生き物というよりも「神の使い」や「パートナー」と宗教や国土の慣習からあったため、議論の余地が無かったのだろう。
動物と人間が共存できるのかの議論は動物の視点ばかりではなく、病的なところで人間の視点から見ていく必要もある。例えば昨年大流行した「H1N1(豚インフルエンザ)」をはじめ、「H5N1(鳥インフルエンザ)」「BSE」「エボラ出血熱」がある。他にも虫や動物から新種のウィルスや病原菌を持ってくることもある。その時にどのようにして私たち人間を守るのか、動物を殺す以外にも手段はあるのかなど議論は絶えない。

第Ⅲ部「これからの動物法」
では、これから動物法はどのような位置にあるべきなのか?
最近では獣医などの動物に対する「福祉」もあれば、人のために働く盲導犬や警察犬などもいる。
今までのところで動物と人間は法律的にどうあるべきか?
人権ならぬ「動物権(?)」はあるのだろうか?
法律論に限らず倫理や哲学的な観点からも論議をする必要がある。

動物法ができて約200年(日本では100年)とあまり発展していない状態にあると言ってもいいかもしれない。200年の中で数多くの法律がつくられたわけであるが、同時に問題点も浮き彫りとなったものもある。もぐらたたき、もしくはいたちごっこのようかもしれないが一つ一つ問題点を潰してゆくことで発展していく。動物法もまた例外ではない。