ネットワーク組織―社会ネットワーク論からの新たな組織像

ネットワーク」という言葉を辞書で調べてみると、

(1)テレビ・ラジオで,番組を送り出す局を中心に,中継回線によって結ばれた,全国的な放送局の組織。放送網。ネット。
(2) 通信回線を利用して複数のコンピューターを接続したシステム。コンピューター資源の共同利用,データ処理の機能分散が実現される。⇒コンピューター-ネットワーク
(3)ある計画を遂行するために必要なすべての作業の相互関係を図式化したもの。コンピューターによる工程管理に利用される。網目状組織。
goo辞書より一部改変)

とある。元々はコンピューターや通信といった所謂電気にまつわる分野から誕生をした。しかしそれがいつしか、人間を媒介とした組織がネットワークと呼ばれ、本書で紹介される「ネットワーク組織」と呼ばれるようになった。70年代以降、企業や社会における「組織」の在り方について活発に議論をされ、変革の目標として「ネットワーク」が誕生したとされている。それが現在になって現実になりだし、ネットワークの在り方から議論に入ることが多くなった。本書は社会における様々な「ネットワーク組織」の意味から、ネットワークの在り方について考察を行った一冊である。

第Ⅰ部「ネットワーク組織の意義」
組織における「ネットワーク化」と一言で言っても様々なものがある。同業他社とのコラボレーションによるものや、まったく違う業界の企業とコラボレーションをすることにより、新しい技術やノウハウを誕生することのできる「ネットワーク」も存在する。他にも同業他社でも国内と海外との企業と連携をすることで世界的に市場競争を有利にするというやり方も存在する。
他にも企業内における異なるプロジェクト同士の連携、さらには都道府県や市区町村といった地方公共団体に多いのだが、企業と地方行政との連携、さらには大学と企業との連携(産学連携)というのもある。

第Ⅱ部「組織原理と構造特性」
1970年代ごろから経済・経営・社会の学問においてネットワーク組織の有用性が認知され、実社会でもその重要性が認知され始めた。今となってはほぼあたりまえのように構築されているのだが、なぜ認知されるようになり、「ネットワーク組織」が浸透するようになったのだろうか。ヒントに「脱工業社会」というのがある。それは硬直化している組織、一企業としての競争しかなかったところから、様々な形で組織を組み、ネットワークの構築を行うことによって、何倍にも何十倍にも可能性を広げる経済や経営、社会を築くことができるという概念からその優位性について本章では考察を行っている。

第Ⅲ部「ネットワーク的な資源と組織能力」
「ネットワーク組織」として画期的なもののひとつに「Suica」や「PASMO」といったICカードがある。さらに今年の3月13日から九州圏との相互利用もスタートするなどSuicaを使用できる範囲が広がっており、九州圏のICカードも東京で使用できる場所も出てきた。ITのネットワークを駆使した「ネットワーク組織」と言える。
テーマパークやネットワークビジネスなど様々な場においてネットワーク組織の可能性は広がりに歯止めはかからない。

現在ではあたりまえにある「ネットワーク組織」は30年ほど前に認知され始めたことを考えると歴史はまだ浅い。その分、経済や社会における「広がり」の可能性はまだまだあり、これからの「ネットワーク組織」がどのようになるのか著者も期待しているという。