仕事は5年でやめなさい。

キャリアにまつわる本は数多くある。仕事に関しても、会社に関してもキャリアをどのようにして構築していくのかについて、私たちの世代のみならず働く人にとって考えるべきか大の一つとして挙げられる。

仕事において区切りをつけるのはなかなか難しいが、日本タリーズコーヒーの操業者である松田氏ははっきりと「5年」とつけている。ではなぜ「5年」と区切りをつけるのか、その5年の中でどのようにしてキャリア構築をしてくべ気なのか、著者の体験談を元にして書かれている。

1章「人生を切り拓く「目的」の見つけ方、「目標」の立て方」
「目標」の立て方にしても、「目的」の見つけ方にしても、それを行うことは大事であるが、いざやってみるとなかなか立てられず、立てたとしても「計画倒れ」や「設定倒れ」というような事を起こしてしまう。
本章では「目的」と「目標」の違いについて説明しながら、5年後との「大目標」の立て方、年に3回決める「目標」の立て方まである。「未来自分史」を作り、「死に方」まで立てるところが面白かった。
それと同時に私自身の考えと著者の考えに共通点を見つけた「5年」と言う区切りである。私は現在SEで会社員として働いているが、入社してから5年後、つまり2013年3月までにどのようなことを学ぶべきかと言う目標を立てている。
一つは「会社を辞めても生き残っていける力をつけること」、
一つは「社会人として一目置かれる振る舞いを身につけること」
一つは「次の5年後につながる事を見つけること」
会社を辞めるか、もしくは同じ会社で違う部署にいるか、はたまた同じ部署で働くかというのは抜きにしてこの目標を立てている。非常に抽象的であるが、どのようなものを身につけていけばいいのか、幅を利かせるためにわざと抽象的に掲げた。
節目まで残り3年、その中でどのようなものを身につけるべきか、行動しながら模索をしているところである。

2章「おぼれながら「金のワラ」をつかめ 失敗は成功の引き金」
もがき苦しみながら失敗を積み重ね、成功をつかみとった話が中心であるが、成功をし続けている人は、その数、またはそれ以上の数を失敗、あるいは挫折をしてきている。
失敗をおそれない人はごくわずかしかいない。むしろ失敗を怖れて、何もできない人が多い。確かに「失敗をしない」一番確実な方法は「何もしない」事である。
しかし、「失敗をしない」事ばかりでは人は大きな成長を望むことができない。失敗のイメージをしながらも飛び込むと言う重要性を本章では教えてくれる。

3章「「凡」に目を光らせろ、些事を磨けば本物の力がつく」
仕事は本来「単純」なものがほとんどである。その単調さから「つまらない」「つらい」というイメージが拭えず投げ出してしまう人もいる。しかしその「つらい」「つまらない」仕事をいかに「面白く」することができるのか考えたことがあるだろうか。
これは見習いで芸人としてスタートしたばかりの明石家さんまに、師匠である二代目笑福亭松之助が
つらい仕事をどのようにしたら面白いのか考えるということについて説いている。
つまらない仕事ほど、ゲーム感覚を取り入れたりするなどをして「楽しくする」事によって仕事の効率や生産性を上げるというのも一つの手段である。
そして仕事などで迷ったときは自らの原点に立ち戻ることについても本章で教えている。

4章「コンプレックスを掘って宝を出せ マイナー意識が道を拓く」
誰しもコンプレックスというのは存在する。ここでは身体におけるコンプレックスと言うよりも、どちらかというと企業と言った社会におけるコンプレックスをどのようにして武器にしていくのかについて日本マクドナルドの創業者である藤田田や日本ミスタードーナツについて例に挙げながら説明している。

5章「自分を伸ばし、人を育てる ノーファン・ノーゲインの心意気」

「楽しみなくして、得るものなし」(p.130より)

これはアメリカで有名な言葉を著者が言い換えたものである。「得る」方法については様々な方法があり、苦しみや辛さでしか得られないものもあれば、逆に楽しさから得られるものもある。

著者は本書が出版される1年前、つまり2007年にタリーズ・コーヒー・ジャパンの社長を退任し、次のステージに進んだ、著者の目的に向けて現在も粉骨砕身でありながらも、楽しく活動していると思う。
次の節目となる2012年にはどのような決断をするのだろうかみてみたい。