幻の北海道殖民軌道を訪ねる―還暦サラリーマン北の大地でペダルを漕ぐ

殖民軌道」という言葉はご存じだろうか。
北海道は江戸時代の後期、当時「蝦夷」と呼ばれていたとき、開拓のために敷設された特殊な交通機関、「鉄道もどき」とも呼ばれたものである。その「殖民軌道」は昭和47年に姿を消し、今やそれを知るものはごくわずかになってしまった。本書は還暦を迎えたサラリーマンが自転車のペダルを漕ぎながらかつて存在した「殖民軌道」を観て回るというものである。本書を観る限りでは釧路や根室といった道東が中心である。

第一章「さいはての殖民軌道(平成十三年 根室)」
根室は北海道最東端の駅があり、さらには最東端の岬である「納沙布岬」があることでも知られている。目と鼻の先には歯舞諸島や色丹島といった北方領土も見え、北海道の漁師がロシアに拿捕されたというニュースのほとんどがここの地域で起こっている。
本章では根室というよりも標茶や中標津など網走や釧路に隣接している地域を中心に取り上げている。

第二章「湿原の殖民軌道(平成十四年 釧路)」
釧路で一番イメージしやすいところでは「釧路湿原」がある。毎年冬になると越冬をしにタンチョウが渡ってくることでも知られている。また釧路は北海道でもっとも寒暖の差が少ないことでも有名であり、夏場はよく霧が発生する。またよく地震の発生する地域でもある。
本章は厚岸郡を中心に釧路の殖民軌道を回っている。厚岸といえば牡蠣の生産地でも有名である。

第三章「北への思い(平成十五年 日高)」
ここで初めて舞台が道南に移る。日高といえば襟裳岬、または競馬において有名な名馬の多くが誕生した地でも知られている。
一章・二章と著者は住まいのある関東から空路で北海道にやってきたのだが、日高ということもあり、船路で北海道に到着し、日高の殖民軌道をみて回るという話であるが、著者は還暦過ぎであるせいか、健康診断の話が目立った。

第四章「旅の終わり(平成十七年 釧路・十勝)」
殖民軌道の旅もいよいよ終盤、ここでは札幌から十勝・釧路に向けてである。札幌の近郊の石狩にも足を運んでおり、そこには馴染み深いものもいくつかあった。

北海道を開拓するにあたり作られた「殖民軌道」は今やその役目を果たし、時代とともに風化していったが「かつてその道があった」という跡は完全になくなってから約40年という月日が流れても消えることはない。