野球(ベースボール)の街ニューヨーク

野球の街というと日本でも様々なところが存在し、アメリカでも本拠地のあるところは軒並み「野球の街」といわれる。今回紹介するのはヤンキースやメッツなどを本拠地に置いているニューヨークが舞台である。とりわけヤンキースはワールドシリーズを1998年〜2000年まで3連覇を達成したことのある名門として知られる。

野球が盛んであり、アメリカ経済の大動脈を担うウォール街、さらにはミュージカルの中心地と言えるブロードウェイのあるニューヨークから野球の詩情について迫っている。

第1章「ブロンクス―「ニューヨーク・ニューヨーク」に聴きほれて」
ニューヨーク・ヤンキースの本拠地であるヤンキースタジアムが存在する。著者の最初の目的地である。ヤンキースタジアムへのアクセスは車や地下鉄の「4号線」と言うのを使う。
話は変わるが「ブロンクス」はニューヨーク市内に5つある地区の一つでマンハッタン島の北東に位置しており、唯一アメリカ大陸にある。
ヤンキースにちなんだ話であるが、ここでは先日亡くなられた「お騒がせオーナー」のジョージ・スタインプレナーも取り上げられている。

第2章「マンハッタン―野球の記憶に満ちた「島」」
アメリカのことをあまり知らなくても「マンハッタン」という地名はわかる人が多いだろう。
マンハッタンで真っ先に思い浮かべるのはタイムズ・スクエア。ちょうど新年を迎えるときにそこに大勢の人が集まり、花火が揚がるのを見ながら新年を祝うことで有名であり、毎年正月にそのようなニュースが流れる。バブル景気の時には日本の企業がタイムズ・スクエアの買収を行おうとしたことにより、強烈な「ジャパン・バッシング」になったと言うこともあった。
ここではジャイアンツのことについて触れている。ジャイアンツは現在、本拠地はサンフランシスコであるが、元々はニューヨークだったという。それを考えると「野球の街」がニューヨークであることに何ら間違いはないと感じてしまう。

第3章「ブルックリン―「最も愛された球団」の記憶」
ここではドジャースのことについて書かれている。ドジャースも現在の本拠地はロサンゼルスであるが、元々はニューヨークのブルックリンに本拠地を構えていた。

第4章「クイーンズ―ナ・リーグ野球の伝統を引き継ぐ」
本章ではメッツを取り上げている。現在もニューヨークに本拠地を置くチームの一つであり、かつて五十嵐亮太や高橋尚成が現在在籍している。かつて阪神タイガースに在籍し、新庄剛志や松井稼頭央もかつて在籍していたとしても知られている。
そのチームも球団創設当初から数年間は万年最下位と呼ばれていたチームであり、創設1年目では40勝120敗というさんざんな成績であった。このことから本書で紹介するときに「大リーグ版楽天」と書かれている。

第5章「スタッテン・アイランド―ニューヨークらしくないニューヨーク」
日本のスポーツニュースでは専らメジャーリーグばかり取り上げられるが、その一つ下にはマイナーリーグがある。本章ではマイナーリーグについて取り上げている。日本球界でいえばイースタンリーグやウェスタンリーグに位置するが、マイナーリーグではファンと選手との垣根を低くするようにしており、「毎試合がイベント」と言うのを合い言葉にしている。さらに経営構造もメジャーリーグとは独立している点でも日本球界と違いがある。

ニューヨークは経済の中心地と呼ばれるだけではなく、野球の中心地と呼ばれていることがわかる。現在ではサンフランシスコやロサンゼルスに移っているチームも元々はニューヨークだったと言うことは私も知らなかった。野球ファン、とりわけMLBなどアメリカ野球のファンにとっては知識を知るばかりではなく、実際にMLBを観戦するガイドも兼ねているので一石二鳥の一冊と言えるのではないかと思う。