経済が世界一シンプルにつかめる本

明日香出版社様より献本御礼。
日本に限らず世界的にも経済はめまぐるしく変化を続けている。それは国単位に限らず、私たちの生活に関わっているだけあり、直視していかなければならない課題である。

とはいえ「経済」という言葉を一括りにしても、学問的な「ミクロ経済学」や「マクロ経済学」、「経済史」があれば、私たちの生活に近い「日本経済」などが挙げられる。そこからまた学ぶ分野も簡単なものから、私たちの生活から大きくかい離しているものもある。

経済学は取っつきやすいところと取っつきにくいところがあるのだが、本書は経済をより私たちの生活に視点を置きつつ、噛み砕いて説明している。元々著者は大学在学中に「気軽にはじめる経済学シリーズ」を自主出版しベストセラーにしたことがある。

第一部「ぼくらのための世界経済入門」
第1章「衣 商品にまつわる話」
日本の消費はほとんど飽和状態にあり、電気製品や自動車など海外に市場を置く企業は少なくない。とりわけソニーやパナソニック、トヨタなど「リーディングカンパニー」と呼ばれるトップ企業は海外に向けた商品も積極的に進めている。2003年から2008年の半ばまで続いた「戦後最長の好景気」はまさに海外に向けた市場が好調であったことからきている。企業は軒並み最高益を更新する中、平均給与は右肩下がりという現象も起こっている。そのことから「実感無き好景気」と揶揄されるところでもある。
景気の動向は海外の貿易だよりと考えると、韓国の経済もかなり外国に頼るところが多い、というよりいち早くそれに気づき実行しているだけあって、サムスン電子やLGが世界に名を連ねる企業にまでのし上がったというのがある。

第2章「食 食べ物にまつわる話」
日本の食糧自給率は2009年現在41%である(カロリーベースによる)。その中で「食」にまつわることはいろいろとあり、捕鯨問題、さらにはクロマグロの漁獲制限もある。ただし本章はそうではなく、日本人の「食」そのものについて説明している。世界経済は成長していく中で、中国やインド、ロシアなどの経済の成長は速く、日本を追い越すのも時間の問題といえる。その中で国そのものが豊かになり、食糧需要も増大していくことにより、それを懸念して政府は食糧自給率対策を行っているのである。

第3章「住 生活環境にまつわる話」
毎日のように変動するのは株だけではなく、ドルやユーロなどの「外国為替」も同じである。この「外国為替」は日本の輸出・輸入に大きく関わる。現在は円高傾向にあるのだが、円高であればいいものというと輸入する作物や原料は安価で手に入る。その一方で日本産業の大動脈と言える自動車や半導体と行った機械の利益が少なくなる。円安傾向になればその逆になる(あくまで一例である)。
そしてもう一つは移民や観光といった外国人の受け入れ環境によるものを挙げている。労働人口減少や高齢化も相まって働き手が不足していく中、外国人労働者の受け入れも増えていくことは確実である。しかし治安の悪化や伝統や文化の破壊、さらに失業など不安や批判もあちこちで見られるという。

第二部「ビジネスマンのための世界経済入門」
第4章「ヒト 人と力にまつわる話」
ここからは、よりビジネスにベクトルを置いた話である。ここでは人口の変動による影響について説明している。人口の変動は労働にも影響を及ぼすが、それに派生して貯蓄率の減少にも言及をしている。

第5章「モノ 国の持ち物にまつわる話」
次はモノである。「国の持ち物」と言うと私はてっきり石油や天然ガスといった「資源」に着目してしまったのだが、ここでは「輸出しているもの」「輸入しているもの」、つまり貿易にまつわるところを説明している。
日本の得意分野は何と言っても機械分野、とりわけ自動車や電化製品には強い。しかし天然資源はほとんどとれず、さらに食糧も国内ではまかないきれず、輸入に頼る。現在最大の貿易相手国は中国であるが、かつてはアメリカであった。そのアメリカとはバブル景気前後に深刻な「貿易摩擦」が生じ、「ジャパン・バッシング」の引き金になった。時の大統領であるビル・クリントンの政権下では在アメリカの日本企業に対し、多額の賠償金を支払わせるなど行ったことでも知られている。

第6章「カネ お金と為替にまつわる話」
最後はカネであるが、ここでは一昨年まで起り続けていた原油の高騰、いわゆる「第三次石油ショック」と呼んでいる。
これはアメリカでサブプライムローンがブームとなり、そこから世界中の投資家が「先物」の石油を大量に買い占め続けたことにより起ったものである。そういえば「戦後最長の好景気」の中でも「ハゲタカファンド」など経済ニュースを中心に叫ばれていた時代が合ったことを思い出す。

「数学」や「理科」と同じように「経済」という言葉だけで拒否反応を起こす人はいる。少なくとも私の大学時代でもそういう人はいた。しかし私たちの生きる中で「経済」というのは切っても切れない存在である。たとえ株取引などが行われた時代でも「経済」はあったのだから。そういった時代の中で、経済でわからないことがあった時にすぐに駆け込める「駆け込み寺」という存在が本書なのだと私は思う。