北朝鮮はなぜ潰れないのか

北朝鮮は日本の終戦後、当時のソ連のバックアップによって建国された国である。金日成がトップである主席となり、独裁政治を築いていった。金日成が92年に病気を理由に政治の世界から一線を退くと(94年に死去)、息子の金正日が総書記となり実験を握った。その金正日も容態が思わしくなく、近々実権が金正日の息子のどれかに継がせるというニュースもある。
独裁国家であり、かつ国民は強烈な貧困にあえぎ、「脱北」と称される亡命を行った民も少なくない。

本書は北朝鮮にまつわる様々な不思議、その中でも北朝鮮は潰れるのかという疑問について北朝鮮の内情に詳しい早稲田大学教授の重村氏が解説をした一冊である。

第1章「なぜクーデターは起きないのか」
北朝鮮でクーデターは実際に起ったことはない。ただしクーデターが計画されていたことは何度かあった。最近のクーデター未遂は1992年、にあった。ちょうど金正日が総書記に就任するあたりの頃である。主席である金日成の容態が思わしくなく、政権委譲もあり得るのではないかという憶測が流れる中、クーデターが計画されていたという。しかしその計画は首脳陣にばれ、関係者はほとんど処刑された。それ以来、総書記の側近に政治軍人を置き、クーデターが起らないよう監視しているという。
クーデターが起らずとも北朝鮮の崩壊の危機は金日成が死去した時、ブッシュ大統領から「悪の枢軸」と言われた時、そして経済制裁を受けた時など計4回にも及んだ。

第2章「後継者問題と影武者金正日」
今は沈静化しているものの、後継者争いは連日ニュースで取り上げられた時期があった。現在の所、有力なのは三男の金正雲である。長男の金正男はこれまで後継者の筆頭と言われてきたのだが、2001年には東京ディズニーランドに、さらにはマカオなど様々な国を渡り歩いていたという。そのことから側近たちは金正男の不信感が高まり、後継者争いという形で派閥争いを繰り広げた、それが世界のジャーナリストたちの耳に入り、連日報道されるようになったという。
後継者争いにも関わるが、金正日が重病により亡くなるのではないかと言う声もあった。さらには「金正日死亡説」も、現在でもまことしやかに囁かれている。北朝鮮の首脳は国と同じように謎が多い。

第3章「北朝鮮はなぜ崩壊しないのか」
貧富の差は日本と比べものにならないほど大きい国であり、かつ経済制裁などの圧力を何度設けている国である。第1章でも述べたように崩壊の危機は4回あった。金日成政権下でも何度かあると考えると、2桁に及ぶのかもしれない。
今でも経済制裁により財政的にも綱渡りの状態が続いていることは確かである。しかし、その綱渡り状態が長きに続いてもなお崩壊しない北朝鮮であるが、これはなぜなのだろうか。
一つは中国、今でも親交のある国である。財政的には微々たるものだが援助を行っており、北朝鮮を崩壊させようとは思っていない。しかしテポドンの実験などで友好国に逆なでするような行為を行っているのは確かで徐々に態度を硬化させつつある。
朝鮮の南側である韓国も同じく崩壊を望まないという。理由としては東西ドイツの統一が例に挙げられる。東西ドイツが統一した1990年を思い出すと、ドイツでは急速に経済が衰退し、失業も相次いだ。それを目の当たりにした韓国国民は統一への意欲が冷めてしまったという。
とはいえ著者はそう遠くないうちに北朝鮮は崩壊すると見ている。少なくとも5年、長くても15年以内には崩壊するという。「社会主義国は完全に敗北する。かつてのソ連や東ドイツと同じように」という考えであるそうだ。

第4章「なぜ拉致問題は解決しないのか」
昨日今日と北朝鮮の元工作員であり、元死刑囚である金賢姫(キム・ヒョンヒ)が来日し拉致被害者家族と面会を行っている。
拉致問題は2002年あたりに進展は見られたが、それ以降進歩すら見られないままである。拉致問題に進展が見られたのは小泉政権の時だけであるが、その時は拉致被害者の安否情報など私たちには相容れられないものだった。北朝鮮から拉致被害者を取り返したと言うことで支持率は上昇したものの、結局解決にすら至らない状況となってしまった。

第5章「北朝鮮は暴発しない」
北朝鮮の暴発、これは軍によるクーデターか、国民の反乱か、あるいは米国や日本からの圧力に対してテポドンや核を用いて報復するのか、どういった定義かは難しい。
しかし暴発論や感情論、さらにテレビや新聞による先導に惑わされず常に情報には疑って掛かりながら、正しい判断力を持つことが重要であると、長年北朝鮮研究を行ってきた著者は訴えている。

北朝鮮は謎の多い国である。確か60年安保から大学紛争の時の間では「北朝鮮は楽園」と語り、北朝鮮に渡った日本人もいたという。しかし数々の情報が浮き彫りになって行くにつれ、北朝鮮との国家間の緊張は高まり、現在も続いている。当然拉致問題の解決、核放棄など様々なことで北朝鮮と対話を通じて渡り合っていかなければいけないが、今の政府にその技量はあるのかと言うと疑わしい。

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