禅問答入門

仏教に限らず、「禅」に関しても様々な本が出ている。自分自身を見つめ直す、考え直すという観点から評価が見直されているのかもしれない。

元々「禅」はいったいどのような歴史があり、どのような思想があるのか。そして「禅」の所作の一つである「坐禅」の「坐る」の意味は何なのか。本書はそれらを解き明かす。

第一部「禅の思想を知る」
禅は中国から伝えられた宗派であり、平安時代に伝わったとされている。禅を取り入れられている宗派で主だった所では「臨済宗」や「曹洞宗」が挙げられる。
実際に禅宗の教えは文字として残っているものが非常に少ない。それは禅宗の根幹の一つに「不立文字(ふりゅうもんじ)」があり、文字として表現をすることを忌避している所にある。ではどのように教えられていたのかというと「以心伝心」とあるとおり、心から心を伝って教えが受け継がれたとされている。

第二部「代表的な禅問答」
「禅問答」は人生においても、ビジネスにおいても使われるが、ここでは禅宗の歴史において代表的な問答を取り上げている。約20個取り上げられているが当ブログではその中から私が印象に残ったものを4個取り上げる。

・拒否によって解らせる(第三節(1)より)
中国大陸が唐王朝の時代に質問を拒否した事を表したものである。「話せばわかる」のが罷り通っている時代に不適応なのかもしれないが、そういう時代だからでこそ、話すのではなく、自分で見つける、もしくは体で答えを感じさせるということも必要なことなのかもしれないと思った。

・一文字で示す教え(第三節(3)より)
今となってはより簡素に、そして分かりやすく書いたり、考えたり、話したりする事が重宝される時代となっている。しかしそれがわかりやすさがどんどん進行していくともしかしたら一文字で表すことが重要とされる時代になるのではないかと邪推してしまう。
以心伝心で教えられ、言葉や話で表すことを嫌う禅宗のあり方を表した所ともいえる。

・働かざるもの、食うべからずー普請作務の教え(第六節(1)より)
あまりにも有名な戒めの言葉であるが、これは禅宗からきているということは私も初めて知った。

・何も考えないことを考えるー非思量の坐禅(結節(1)より)
禅宗の根本は「坐禅」であるのだが、その坐禅をしているときの心境を表している。坐禅をしながら自らの考えを見直す、思想や人生を見直すといったことを考えられがちであるが、本来「坐禅」においての心境は「考えない」ということ、ただひたすら「坐る」ということを意識するだけである。

第三部「禅思想史概観」
禅の歴史について書かれている。最初にも書いたのだが、日本では平安〜鎌倉時代に伝来したとされている。「禅」が誕生したのは600年頃、中国大陸では「隋」の王朝の時に誕生している。

仏教を語る上で欠かせないものの一つである「禅」であるが、その歴史と考え方はあまり知られていない。本書はそれを解き明かしてくれる。