甦るリヴァイアサン


「リヴァイアサン」はホップズの名著の一つであり、ドイツの名宰相であるビスマルクがもっとも影響を受けた本として有名である。ホップズは他に「万人の万人に対する戦争」もある。
本書はあくまで「リヴァイアサン」を中心にホップズの思想によって社会はどのように変化をしていったのか、そしてホップズ以前の思想とホップズの思想との違いなどについて考察を行っている。

第一部「ホップズの近代性とその意義」
第一章「世界観の転換―ピューリタン革命と「神の王国」論」
ホップズが「リヴァイアサン」を著したのは1651年、それ以前には「市民論」や「法の原理」も出しているが、「リヴァイアサン」の印象が強く、あまり浸透していない。
「ピューリタン(清教徒)革命」が起こったのは1642年、リヴァイアサンが出る前、というよりちょうど「市民論」が出てきた頃に起こっている。
ピューリタン革命前後では、宗教(特にカトリック)と政治がいがみ合っていた時代であり、「リヴァイアサン」字体もカトリックに対する批判も盛り込まれている。

第二章「社会契約論―自然法と自然権」
「社会契約論」と考えるとロック、モンテスキュー、ルソーが挙げられるが、それ以前にホップズの存在も忘れてはならない。
ただ後に語られるルソーなどの「社会契約論」との違いは、ルソーらは「国民」らに権利があるのだが、ホップズは「政治」を統括するものに絶対的な権利を有すると主張している。つまりこれまでカトリックの絶対的権威を批判し、政治的な権威者に権利を委譲すべきであるという。ルソー等の考えと対立するようなものであるが、ホップズがいた時代はカトリックと政治の対立が浮き彫りとなっていただけに、社会契約論の源流としてこのように語られるのだろう。

第三章「軍事論―戦争拒否の自由と国家防衛義務」
軍事に関する論述は、古代ギリシャ哲学の頃から主張されてきているが、ここでは「戦争拒否の自由」が主立った考えとして挙げられる。

第四章「国際関係論―自然法を諸国民の法」
副題にもあるとおり「自然法」と「諸国民の法」の違いについて考察を行っている。
それぞれの特性について挙げてみると、「自然法」は理性的なところを指示をする、つまり「人として」の倫理や常識を守るべきところを法律として名文化したものである。
「諸国民の法」は「諸国」と書かれているとおり、他国との関係において最低限守るべき法律、つまり「国際法」に当たるものである。

第二部「ホップズと近代批判者」
第五章「ホップズとアレント―必然と自由、義務と愛」
第二部ではホップズの思想を近代の哲学者はどのように批判をしたのかについて、アレント、レオ・シュトラウス、ネグリ=ハートを挙げている。
本章ではアレントの批判について取り上げられている。アレントは第二次世界大戦前後に活躍した思想家であるため、ホップズの思想をナチスのホロコーストのことについても比較を行っている。

第六章「ホップズとレオ・シュトラウス―政治哲学と道徳的基礎」
レオ・シュトラウスはドイツのユダヤ人家庭で生まれた。アレントと同じようにドイツで生まれ、アメリカで亡命した経験から面識はあったのだという。
レオ・シュトラウスが展開している批判は「自然権」であり、この「自然権」の在り方が近代の在り方に必要なことであり、道徳的なことの基礎になるのだという。

第七章「ホップズとネグリ=ハート―国民国家と<帝国>」
アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの2人の思想家によるホップズ
ネグリの思想は簡単にいうと「共産主義」であり、イタリアでイタリア首相の誘拐暗殺事件の嫌疑にかけられ逮捕・収監された経歴をもつ。
一方のハートはネグリに師事しながらも、2000年に「<帝国>」を出版し、世界的なベストセラーとなった。
ネグリ=ハートが展開しているホップズ批判は主に「主権」のことに関してである。

ホップズの思想は後の社会契約論に大きな影響を受けたばかりではなく、今日の国家論や法律といったところにも通ずるところがあるということがわかったが、国家権力や「万人の万人に対する闘争状態」など、本書を持つねらいが見えてこなかった所が残念に思える。

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